真保裕一著『ダイスをころがせ!(上)』の表紙画像

真保裕一 🙂🙂🙂🙂

ダイスをころがせ!(上)/ 真保 裕一

みなさんは「政治」や「選挙」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
難しい、堅苦しい、どこか遠い世界の話… そんなふうに感じる方も多いかもしれません。

「忙しくて行けない」「興味ないし」「入れたい人がいない」…
理由は人それぞれですが、選挙をスルーしたことがある人もきっと多いはず。

今回ご紹介する本は、まさに「政治」と「選挙」のお話。

『ダイスをころがせ!』(著者:真保裕一)です。

上下巻あり、今回は上巻をご紹介します!

鳥A

こんな人におすすめ!

・政治は苦手でも人間ドラマは好きな人
・成長物語が好きな人
・政治に興味が無いわけじゃないけど難しい話が苦手な人

あらすじと補足

本作の主人公は、仕事を失った駒井健一郎という男性。
旧友で衆議院議員に立候補する天知達彦を手伝うことになり、秘書として選挙戦の渦中に飛び込んでいきます。

選挙ポスター貼りや街頭演説の準備といった裏方の仕事から、資金集めや地元有力者との駆け引きまで…
普段はなかなか知ることのない政治の舞台裏がリアルに描かれています。

華やかに見える選挙活動の裏にある泥臭さや、理想と現実のギャップも浮き彫りにされていて、
「政治ってこういう世界なんだ…!」と驚かされる場面も多いです。

単なるお仕事小説ではなく、人間関係や社会の縮図が見えてくるのも本作の大きな魅力となっています。

印象に残った場面

サブタイトルが長くて説明的!

たとえば「妻が出ていき、懐かしくも悩ましき旧友が来る」や「事前ポスターを発注、政治資金管理団体の設立へ」といった具合。
読む前から場面の内容がだいたい伝わります。笑

ただ、そのぶんストーリーを追いやすく、「次はこういう展開なんだな」と見通しを持ちながら読み進められます。

好みは分かれると思いますが、わかりやすいので個人的には好きです☺️

不器用な関係がリアル

登場人物同士の人間関係には、読んでいて思わずイラッとする場面がちょいちょいあります。

些細なことで言い争ったり、遠慮のない物言いをしたりと、「なんでそうなるの!」と突っ込みたくなる瞬間が多いのです。

けれど、その感じこそが人間臭さを際立たせていて、妙にリアル。
完璧な人間関係ではなく、むしろ不器用なぶんだけドラマが生まれているように感じました。

登場人物の不器用さにモヤモヤするのに、つい先を読みたくなる… そんな面白さがあります。

選挙戦の熱量と虚しさ

街頭演説やポスター貼りといった場面からは、とにかく圧倒的な熱量が伝わってきます。
声を張り上げ、笑顔を振りまき、必死に支持を訴える候補者やスタッフの姿は胸を打ちました。

しかし同時に、「こんなに尽力しても、果たしてどれだけ票につながるのだろう」という虚しさも漂っています。

ポスター作成や事務所開設、政治資金管理団体の設立など、資金が乏しい中で知恵を絞りながら進めていく姿には、選挙の厳しさがにじみ出ています。

特に、本作の立候補者・天知は無所属での出馬。
政党の後ろ盾を持たずに戦うことが、どれほど大変なのかを改めて実感させられる場面でした。

総評

4 out of 5 stars

ネット上での評価はそれほど高くないように見受けられます。

「終わり方が微妙」という声もあるので、下巻はザンネンな仕上がりなのかもしれない…。

けれど、少なくとも上巻については素直に「おもしろい」と感じました。

2002年に出版された作品なので、法改正などを経て現在とは異なる部分も少なくありません。
それでも、政治とカネの問題や制度の矛盾点が、素人にもわかりやすく描かれていて、今読んでも十分に意義のある内容だと思います!