みなさんは「お正月の遊び」と聞いて、何を思い浮かべますか?
コマ回し、凧揚げ、羽つき、すごろく、そして福笑い…。
令和の今でも現役で遊ばれているのでしょうか。
お正月らしく家族みんなで楽しめる遊びなので、小さなお子さんがいるご家庭では、まだまだ人気があるかもしれませんね。
というわけで今回ご紹介する本はこちら。
『ふくわらい』(著者:西加奈子) です。
こんな人におすすめ!
・他者との関わりから、自分を見つめ直したい人
・好きなことをして生きていきたいのに、自信がない人
・自分の存在意義がわからないという人

あらすじと補足
鳴木戸 定(なるきど さだ)という、少し変わった名前の女性が主人公。
定は出版社で編集者として働いていますが、特殊な生い立ちから感情が欠落しており、誰かを愛したり、嬉しい・悲しい・怖いといった感情を持ち合わせていません。
そんな彼女が、プロレスラー・守口 廃尊(もりぐち ばいそん)をはじめ、周囲の人々と関わる中で、少しずつ「感情」というものに触れ、目覚めていく…というストーリー。
本作は「人間らしさとは何か」というテーマを、独特のユーモアと温かさで描いています。
定の感情が欠落している姿は一見不思議ですが、日常を生きる私たちの中にも「感情をどう扱えばいいのかわからない瞬間」がありますよね。
彼女の変化を通して、当たり前のようで難しい「生きること・感じること」を、改めて考えさせられる作品です。
印象に残った場面
▶ カバーの絵が素敵
著者・西加奈子氏は本文だけではなく、カバーの装画も担当しているため、カバー絵も見どころのひとつ。
ヤマモトは本屋さんでこのカバー絵に一目惚れして、思わずジャケ買いしてしまいましたが、実はこのカバー絵、主人公・定のタトゥー柄をモチーフにしているんです。
定は全身にさまざまな動物のタトゥーを彫っていて、その模様がカバーに反映されていると思うと、とてもおもしろい仕掛けだなと感じました。
▶ アクが強い、でもそれだけじゃない
人肉を食べる話や大便の話、性器のことまで…。
もう、アクが強すぎる描写が盛りだくさんです!笑
正直「うわ、これはちょっと…」と思う場面もあるのですが、不思議と「ただのグロさ・下品さ」では終わらないんですよね。
むしろ、言葉選びが丁寧だからこそ、妙に知的だったり、どこか甘美にすら感じてしまう。
下品なのに上品、みたいな…。
そんな二面性がクセになるんです。
なので読んでいても嫌悪感だけじゃなく、「なんだこの独特の世界観!?」と引き込まれる。
唯一無二の語り口に圧倒されました!
▶ プロレスラー・守口廃尊
廃尊は、うつ病を患い自殺未遂を繰り返してしまうプロレスラー。
現役選手としてリングに立ちながら、雑誌でコラムも執筆しており、定はその担当編集者として彼と知り合います。
「強靭な肉体を持つプロレスラー」という側面と、
「うつ病で精神的に脆い人間」という側面が対比され、
そこに強烈な人間らしさが浮き彫りになっていて、とても良い味が出ていました。
特に印象的なのは、彼がリング上で本の原稿を暗唱するシーン。
肉体と精神、強さと脆さが同居した姿に心を揺さぶられます。
本作の中で、誰よりも輝いていて、一番「人間らしい」存在だと思いました。
総評
▶ 
前述のとおりアクが強く、かなりアブノーマル。
性に関する描写も多めでした😅
ヤマモトは正直、あまり得意なジャンルではなく…。
登場人物もエキセントリックすぎるかな、と感じる部分もありました。
それでもやっぱり、守口廃尊は強烈に印象に残るキャラクターなので、彼の存在だけでも読む価値があると思います。
人生に悩みのある方におすすめしたい一冊。
きっと勇気をもらえる作品だと思います!