みなさん、和菓子はお好きですか?
「洋菓子の方が好き」「あんこはちょっと苦手」という方も多いかもしれませんね。
でも、この本を読むと、和菓子がぐっと身近に、ちょっと好きになるかもしれません。
今回ご紹介する本はこちら。
『和菓子のアン』(著者:坂木司) です。
和菓子×日常×ちょっぴり謎解きの、ほんのり甘い物語です。

こんな人におすすめ!
・暴力のない物語でほっとしたい人
・優しい読後感の物語を探している人
・日常の中の小さな謎を楽しみたい人
あらすじと補足
主人公は、高校卒業後に進路が決まらないまま、デパ地下の和菓子屋さんでアルバイトを始めた女の子・杏子(きょうこ)、通称アンちゃん。
慣れない接客や個性的な同僚たちに戸惑いながらも、仕事を通して少しずつ成長していくアンちゃん。
店を訪れるお客様や、和菓子にまつわる小さな出来事のなかで、ちょっとした「謎」が現れます。
舞台はデパ地下ですが、物騒な事件が起こるわけではありません。
和菓子をきっかけに人との繋がりや心の動きを見つめていく、ミステリーというよりは「ほっこり謎解きストーリー」と呼びたくなる、やさしい雰囲気の作品です。
印象に残った場面
▶ 杏子ちゃんの性格
進学も就職もせず、なんとなくデパ地下の和菓子屋さんでバイトを始めたアンちゃんですが、最初は「ちょっとクセのある子」という印象です。
「女性ばかりだと思っていたのに、男性社員がいて失敗した」
「美人な店長だけど、ファッションセンスはイマイチ」など…。
自己評価が低くて卑屈なのに、人のことはサラッと辛口。読んでいて、ちょっとイラッとすることも。笑
でも、仕事に慣れていくにつれて、表情も少しずつやわらかく、人との関わり方も変わっていく様子が描かれていて、気がつくとなんだか応援したくなっていました。
▶ おいしそうな和菓子がたくさん!
物語のなかには、四季折々の美しい和菓子が次々と登場します。
「おとし文」や「水無月」など、名前だけではすぐにイメージできないものも多く、読みながら自然と検索したくなってしまいました。
実際に調べてみると、その形や色にはきちんと意味が込められていて、「どうしてこの形?」「名前の由来は?」という豆知識も作品のなかで紹介されています。
読んで楽しい、調べて楽しい、そして何より食べたくなる!三拍子そろった魅力がこの本にはあります。
ヤマモトも、読み進めるうちにスマホのスクリーンショットが和菓子だらけに。笑
文字を追っているだけなのに、味覚や視覚までも刺激される。そんな不思議な読書体験でした。
総評
▶ 
全体を通してライトノベルのような軽やかな文体なので、読みやすさは抜群!
ただしその分、文学的な深みを求める読者には少し物足りなさを感じさせるかもしれません。好みが分かれるタイプの作品だと思います。
とはいえ、小説をあまり読まないティーン層や、「今は重たい話はちょっと…」というときにはぴったりの一冊。肩ひじ張らずに楽しめて、気軽に読書の世界へ入れる入口のような作品だと感じました。
そして何より、物語を通じて和菓子そのものの魅力に触れられるのが大きなポイントです。
ヤマモト自身、あんこが苦手で和菓子を避けていたのですが、この本をきっかけに「ちょっと試してみようかな」と思い、気づけば実際にお店へ足を運んでいました。
物語としての完成度よりも、「和菓子の魅力を伝える入り口」として評価したい作品です。
後日買ってきた和菓子の写真

ヤマモトはあんこが苦手で、この本を読むまでは和菓子をなんとなく避けていました。
初めて買った和菓子は、まあ見事にカラフルでかわいい。
実際に食べてみると、子どもの頃に感じていた重たさとはまるで別物。
甘さは控えめで、口当たりもなめらか。上品な味わいに驚かされました。
ほろっと溶けるあんこは、お茶だけでなくコーヒーにもよく合うんですね。
気がつけば、膝をそろえて背筋が伸びていて…
「わたし、今ちょっと上品な人かもしれない!」と錯覚するほど。笑
和菓子って、単に甘いお菓子ではなく、食べる人の気持ちや所作まで整えてくれる存在なんだなと、しみじみ思いました。
この作品を通して、ふだん何気なく過ごしている日常にも、ちょっとした気づきとときめきをもらえた気がしました。