みなさんは、恐怖体験や不思議体験をしたことがありますか?
ヤマモトはそういう話が大好きで、いろんな人から体験談を聞いては喜んでいます!
(実際に体験するのは苦手😅)
そんなヤマモトがこれまで聞いた中で一番怖いと思った話は…
ヤマモトのリア友が実際に体験した話。
友達が不倫相手と一緒にいたとき、空からなにかが落ちてきて、拾ってみたら財布に入れてあったはずの自分の結婚指輪だった、という話です。不倫、ダメ絶対。
というわけで、今回ご紹介する本はこちら!
『夜行』 (著者:森見登美彦) です。

こんな人におすすめ!
・不思議な世界に迷い込んでみたい人
・余韻の残る幻想物語を味わいたい人
・現実と幻想が交錯する物語が好きな人
あらすじと補足
仲間たちと鞍馬の火祭を見に行ったあの夜、グループのひとりが突然姿を消しました。
それから10年後。再び火祭を見に行くために、当時の仲間たちが顔をそろえます。
実はその仲間全員が 『銅版画・夜行』 にまつわる奇妙な体験をしており、物語はそれぞれの視点から語られる不思議なエピソードを通じて展開していく… というストーリーです。
表紙が綺麗でかわいいので、ほのぼのとした青春物語を想像するかもしれません。
しかし、読み進めるにつれて、異世界や神隠しを思わせるような不穏な空気がじわじわと広がっていきます。
お祭りの夜。
祭囃子や太鼓、笛の音。
浴衣ではしゃぐ子どもたち。屋台の賑わい。
そんなにぎやかな光景のすぐそばで、仄暗い闇がひっそりと口を開けているような、現実と非現実のあわいに足を踏み入れてしまったかのような、独特の空気感が味わえる作品です。
印象に残った場面
▶ 森見登美彦氏らしい独特表現
いつも「えっ、そこ?」という部分を、ふわっと、それでいてグッとくる言葉で表現してくれる森見氏。
ヤマモトのお気に入りは、
「児島くんの唖然とした顔が金時豆のように照らしだされました」
という一文です。
金時豆…!
こういう絶妙な比喩表現、大好きです。
▶ みなさんメンタル強すぎ
登場人物、みなさん結構な恐怖体験をしているのに、その体験のことを「とくに何ということもない平凡な旅の思い出」としているような描写があり、思わず「なんでだよ!」とツッコんでしまいました。
いやいや全然平凡じゃないから。
もし自分が同じ体験をしたらと思うとめちゃくちゃ怖いから。
どんだけメンタル強靭なの😂
このギャップが物語に独特の不気味さを与えていて、
「怖いのに、淡々としている」という奇妙な読後感を残しています。
▶ 全体的に、ねっとりとした得体の知れない怖さがある
物語の中には、読んでいて「ん?」と違和感を覚える場面がいくつもあります。
読み進めるうちに少しずつ腑に落ちる部分もあるのですが、すべてが明確に説明されるわけではなく、多くが読者の解釈に委ねられています。
そのため、読後に「結局どういうことだったの?」とモヤモヤを抱える人もいるかもしれません。
けれども、その「はっきりしない終わり方」こそが魅力だと思いました。
何もかもを明快に示すのではなく、あえて得体の知れないものを残す。
そのおかげで、読了後もしばらく頭の中にじわじわと怖さが残り続けます。
まさに「ねっとりとまとわりつくような恐怖感」が、この作品の大きな特徴だと感じました。
総評
▶ 
全体としてはファンタジー作品ですが、ただ夢の世界を描くだけではなく、どこか背筋がぞくりとするホラーテイストが色濃く漂っています。
そのため、ファンタジーアレルギーの方(ファンタジーはちょっと苦手という方)も、手に取りやすい一冊だと思います。
物語は異世界や神隠しといった民俗的な不思議さと、「きさらぎ駅」のような都市伝説的な怖さが絶妙に溶け合っていて、読み終えたあともしばらく余韻がまとわりつきます。
説明されすぎない「余白」があるからこそ、読者それぞれの想像力が働いて、より深く作品世界に浸れるのも魅力でした。
ファンタジーとしても、ホラーとしても楽しめる独特の読書体験。
こういう世界観が好きな方には間違いなく刺さるし、普段このジャンルを読まない方にも新鮮な驚きを与えてくれるはず。
おすすめです!