みなさんは、「世間って狭い!」「こんなところで繋がってるんだ!」といったような経験、ありますか?
ヤマモトは数年前に今の職場に転職したのですが、配属された部署で、なんと15年以上前にバイト先の上司だった方と偶然再会したんです。
そのときは2人で「狭っ!!🤣」と叫んで大爆笑!
更には共通の知人がいることも後日発覚して、びっくりの連続でした!
ヤマモトの上司は良い人だったので、奇跡の再会はとても嬉しいものでしたが、こうした思いがけないつながりに出会うと、時には人間関係の「濃さ」や「こわさ」を実感させられることもあるかと思います。
今回ご紹介するのは、まさにそんな人間関係の濃さと連鎖の怖さが描かれたミステリー小説。
『ドミノ倒し』(著者:貫井徳郎)です。

こんな人におすすめ!
・予想外の展開にわくわくしたい人
・人間模様が複雑に絡み合う物語が好きな人
・人間の思惑や心の奥を覗くのが好きな人
あらすじと補足
舞台は地方の田舎町。そこで探偵業を営む男性・十村が、この物語の主人公です。
ある日、十村は元恋人の妹から「殺人事件を調べてほしい」と依頼を受けます。
気の進まないまま調査を始めた彼でしたが、やがてその事件が別の出来事と繋がっていることを知ります。
さらに調べを進めるうちに、また別の事件との関連が浮かび上がり、次々と芋づる式に新たな真相が姿を現していきます。
1つの事件を追うたびに、新たな謎がドミノのように連鎖して広がっていく…まさにタイトル通りの展開が待ち受けるミステリーです。
印象に残った場面
▶ 設定の前情報がない
十村の元恋人はすでに亡くなっており、彼はその女性を忘れられずに、彼女が育った田舎町へ移り住み、そこで探偵業を始めています。
どうやらそういう前提があるようなのですが、物語はそんな説明をすっ飛ばして、いきなり「元カノの妹が十村の探偵事務所を訪ねてくる」という場面から始まります。
前置きがなく突然本題に入るため、「え、これシリーズものの続編?」「大事な前提を読み飛ばした?」と一瞬戸惑ってしまいました。
ただ、調べてみたところ本作はシリーズではなく独立した作品。
つまり説明不足なのではなく、あえて背景を伏せたまま始めているんですね。
そのため冒頭では少し混乱しましたが、読み進めるうちに人物像や背景が徐々に見えてきて、違和感は解消されました。
むしろ「徐々に全体像が立ち上がってくる」展開は、この作品ならではの味わいなのかもしれません。
▶ 恐るべし、田舎ネットワーク
「田舎は人間関係が密」というイメージ、ありますよね。
ご近所から野菜をもらったり、子育ても地域で助け合ったり、素敵な面もたくさんあります。
でもその一方で、噂が一瞬で広まったり、移住者がよそ者扱いされたりと、閉鎖的な一面もあるように思います。
(⚠️あくまでヤマモトのイメージです!)
この作品では、そうした田舎特有の「人間関係の濃さ」がじわじわ効いてきます。
事件の調査を進めていく中で、登場人物たちの思惑やしがらみが複雑に絡み合い、まるで見えないネットワークに絡め取られていくような息苦しさがありました。
都会では考えられない「人と人との近さ」が、物語の怖さをより際立たせていると感じました。
総評
▶ 
貫井徳郎氏といえば、冤罪事件を扱った重厚な作品や、幼女殺人の被害者家族に焦点を当てた社会派のイヤミス系小説が印象的です。
読後にずしりと残る、あのイヤな余韻こそが魅力だと感じている読者も多いでしょう。
ただ本作『ドミノ倒し』は、その路線とは少し毛色が異なります。
レビューの中には「結末がモヤっとする」という声もありますが、ヤマモトはそうは思いませんでした。
たしかにラストはすべてを解決してくれるわけではなく、「このあとどうなるの?」という余韻を残します。
しかし最初に依頼された事件の真相は一応明らかになっており、決して投げっぱなしではありません。
むしろ本作は、「人間こそが一番怖い」というテーマを、皮肉やブラックユーモアを交えて描いたコメディミステリーだと思います。
完全解決してスッキリする話ではなく、人間関係の滑稽さや恐ろしさをユーモラスに見せているのが特徴です。
そのため、イヤミスを期待して読むと肩透かしを感じる人もいるかもしれませんが、ブラックユーモアを楽しむつもりで読むと意外に後味は悪くなく、むしろ味わい深さが残る作品だと感じました。
みなさんがどう受け取るかはわかりませんが、ヤマモト的にはモヤモヤも少なく、十分に楽しめた一冊でした!