こんにちは!ヤマモトサオリです。
読みかけの本を家に置き忘れ、数日間は家に戻らない… そんなとき、みなさんならどうしますか?
私は我慢できずに新しい本を買ってしまいました☆
家には積読が山ほどあるので、最近はなるべく自制していたのですが、買う気満々で本屋さんに行くのはやっぱり楽しいものですね!
そんな状況で本屋さんをぶらぶらしていたときに出会ったのが、こちらの本。
『老人ホテル』(著者:原田ひ香)です。
まずタイトルがシンプルでいいですね。
「老人」と「ホテル」、どちらも普段よく耳にする単語なのに、並べてみると妙に据わりが悪い。
この違和感のある組み合わせに、原宏一氏の『かつどん協議会』や『床下仙人』『天下り酒場』に通じるユーモアを感じました。
こんな人におすすめ!
・将来を考えるきっかけが欲しい人
・社会派テーマを軽めに読みたい人
・資産運用や将来設計に関心がある人
あらすじと補足
実際に読んでみると、タイトルから想像していた「老人ホーム的な話」ではなく、いい意味で予想を裏切られました。
主人公は、機能不全家庭で育ち、お金の管理の仕方を知らない女の子・日村天使(ひむらえんじぇる)ちゃん。
親からお金の使い方をまともに教わることのないまま育った天使ちゃんは、あるとき「お金持ちになる!」という強い執念を抱きます。
そんな天使ちゃんが学びの場に選んだのが、長期滞在する老人たちが多く暮らすホテル。
人生の先輩である老人たちに教えを請いながら、お金にまつわる知恵やノウハウをひとつずつ吸収していく… という、ちょっと変わった成長譚です。
実は、読み始めてすぐの段階でも、もうひとつ誤解が。
冒頭で提示されるのは「天使(えんじぇる)」という名前と、「厚ぼったい一重まぶた」という容姿描写。
この情報で、私は「人間界に降りてきた、モサッとした天使(あるいは死神)が老人を迎えにくる話」なのかと思ってしまいました。
もちろん、これも実際の内容とはまったく違っていました(笑)
印象に残った場面
> キラキラネーム
天使ちゃんは、生活保護を不正受給している親と、7人きょうだいの末っ子という、かなり特殊な家庭環境で育ちます。
長女が「大天使(みかえる)」、長男が「堕天使(るしふあ)」といった具合に、兄弟全員がキラキラネームで統一されており、兄姉には「亜太夢(あだむ)」と「衣歩(いぶ)」もいます。
この現実離れしたネーミングセンスが、そのまま家族の生態を象徴しているように感じました。
一方で気になったのは、作中の誰もこの名前に言及しない点です。
現実のキラキラネームを持つ子どもたちへの配慮からあえて触れていないのかもしれませんが、読者としては名前に対して誰も反応しないことに、かえって違和感を覚えてしまいました。
> 老人と老婆と老女
場末のキャバクラの場面で、少し気になった一文があります。
「この場所に一番似合わないのが老婆だった。老人ならまだわかる。キャバクラで金を使う年老いた男はたくさんいる」というところです。
「老人」というのは本来、性別を問わない言葉のはず。
タイトルも『老人ホテル』ですし、作中には女性の老人も普通に登場します。
他の場面では女性にも「老人」が使われているのに、ここだけ「老人=男性」「老婆=女性」と分けているのは、なんだか不自然でした。
単なる言葉の選び方の違いかもしれませんが、そもそも「老婆」に対応する男性の言葉とは何なのか。
「老爺」…?「老男」…? どれもしっくりこなくて、少し考え込んでしまいました。
ちなみに作中、年配の女性従業員のことは「老婆」でも「老人」でもなく「老女」と呼ばれています。
この呼び分けにまで気を取られてしまったのは我ながら細かすぎると思いましたが、たった一文の引っかかりから、本全体の言葉選びが気になり始めてしまいました。
> 家賃・宿泊費が安すぎる
天使が働いているビジネスホテルの宿泊費は1泊4,800円、連泊だと3,800円とかなり安めの設定です。
さらに、関東でバストイレ別のワンルーム、駅から徒歩4分・築5年という好条件の物件に家賃6万5千円で住んでいて、「高いから引っ越せ」と言われるくだりがあります。
正直、この金額設定には違和感を覚えました。
関東で築浅・駅近・バストイレ別なら、むしろ6万5千円はかなりの格安物件です。
しかも、その後見つけたアパートは築40年・駅から徒歩13分で家賃2万7千円という設定でした。
私自身、家賃が安いとされる雪国の地方都市に住んでいますが、
10年以上前に住んでいた築35年・エアコンなし・駅から徒歩12分のアパートでさえ、当時の家賃は3万8千円。
それでもかなり「安い」と感じていました。
関東で2万7千円となると、現実的には共同トイレ・風呂なし・かなり古い物件か、あるいは事故物件くらいしか思い浮かびません。
作中ではWi-Fiやスマホも登場するので舞台は現代ですし、本書自体2025年4月発売の新刊です。
それにもかかわらず、手取り16万円で月8万円以上貯金できると描かれており、リアリティの面では参考にしづらい部分が多く感じました。
> 前振りが長くて、突然終わる
主人公の天使は、金持ち老婆・光子からお金のノウハウを教わるため、彼女が住むビジネスホテルで清掃員として働き始めます。
ところが、光子に取り入るまでがとにかく長い!
元ジャーナリストの老婆・幸子に自分の過去を記事にされるのを承諾したり、光子との間で「教えてください」「嫌だね」という押し問答を繰り返したり…
ようやく光子が「教えてもいいよ」となるまでに、本書の半分を費やします。
さらに投資家の老人・大木からもノウハウを学び、天使のお金が増えていくところで物語は盛り上がっていきますが、そこから急に終盤へ突入。
本自体はまだ数十ページ残っているのに、本編は突然幕を閉じ、特別収録のスピンオフ短編へと移ります。
最初は「ここで終わり?がっかり…」と思ったのですが、その短編が本編と密接に繋がっていて安心しました。
「あ、ちゃんと続きがあったんだ」とホッとしたのも束の間、読み終えてみるとやっぱりモヤモヤが残る終わり方でした。
総評
▶ 
私自身もお恥ずかしながらお金の管理が得意ではなく、外食が大好きだったり、欲しいと思ったらすぐ買い物してしまったりするタイプです。
だからこそ、本作の天使ちゃんに自分を重ねながら読み進めました。
設定金額が昭和の時代のように現実離れしていて参考にならない部分もありましたが、それでも共感できる場面は多々ありました。
救いのあるハッピーエンドを期待していたので、最後の切なさには余計に胸が詰まりました。
残念に感じた点もあります。
不動産屋と光子の関係は伏線が回収されないまま終わり、幸子の本が出版されたあとの反響も描かれません。
前半の長い「溜め」に比べて、ノウハウ部分があっさり終わってしまったのも物足りなく感じました。
先輩・山田さんはシングルマザーとして仕事も頑張っている様子が描かれているだけに、もっと掘り下げてほしかったところです。
とはいえ、文章はテンポよく読みやすく、登場するテーマも興味深いものばかりでした。
NISAやiDeCo、ふるさと納税、不動産投資など、私も機会があれば勉強したい分野なので、どれももっと深く読みたかったです。
一冊完結ではなくシリーズ化されていれば、より充実した作品になっていたかもしれません。
本作を通じて「お金の使い方や貯め方を考えるきっかけ」を与えてくれたのは間違いないと思います。
将来への視点を改めて意識させてくれる一冊でした!