みなさんは「ピアノ調律師」という仕事をご存じですか?
ピアノの調律や保守管理を専門に行う職業のことです。
楽器メーカーでピアノの設計や製作に携わる調律師の方もいるようですが、
一般的には、学校や個人宅などでピアノの調律を行う仕事というイメージを持たれているかもしれません。
さて、今回ご紹介する本はこちら。
ピアノ調律師さんの物語。
羊と鋼の森(著者:宮下奈都)です。
あらすじと補足
将来にこれといった目標もなく、なんとなく日々を過ごしていた男子高校生・外村。
そんなある日、学校に来たピアノ調律師との出会いをきっかけに、静かで奥深い「音の世界」へと惹かれていきます。
ピアノのなかには羊毛と鋼… 柔らかさと硬さが共存する森のような世界が広がっていました。
ヤマモトは「調律師って絶対音感がないと無理なんじゃ?」と思っていたのですが、主人公にはそれがありません。
けれど、彼は「耳を澄ませる」ことで音をとらえ、自分なりの道を見つけていきます。
技術だけではない、繊細で感覚的な職人の世界が描かれた作品です。
印象に残った場面
▶ 明るい音、澄んだ音。 華やかな音ってリクエストも多い
これはちょっと驚きました。そんなふんわりしたリクエストが通るんですね。
同じドレミの音でも、調律次第で音階はそのままに、音の雰囲気を変えることができるなんて。不思議。
▶ 《ラ》の音の基準は440ヘルツと決められている
440ヘルツといえば、「悪魔の周波数」「デビルトーン」なんて呼ばれることもあって、有名ですよね。
でも、調律に使われているこの440ヘルツとは意味が違うんでしょうか?
気になってちょっと調べてみたけど……よくわかりませんでした😅
▶ 5月に雪
ヤマモトは雪国の生まれ育ちなので、「5月に雪」と書いてあるのをみて親近感が湧きました。
5月でも、降るときは本当に降りますからね。
どこの街が舞台なのかな?と思ったら、映画版は旭川で撮影されたそうです!
▶ 一部表現が独特なところも
ときどき「これ、どういう意味?」と考えてしまうような表現がありました。
たとえば、
「美術館へ行くことが行事になる時点で何かをあきらめざるを得ない環境だったのだと今になればわかる」
という一文。
おそらく「本当は美術館なんて行きたくない。でも行事だから行かないといけない」
= 行きたくなくても従わなければいけないような、自由のきかない環境だった… ということなのかな?
しばらく考えてしまいました。
でも全体的な文章は丁寧で、とてもわかりやすかったです!
総評
▶ 
ピアノを弾いたことすらなかった主人公が、調律師の道を歩みはじめ、
ときにはお客さんや先輩から厳しい言葉を投げかけられながらも、
それでも挫けずに前に進んでいく姿に、心を打たれました。
この主人公の強さ、私も見習いたい。
そんな気持ちにさせてくれる、静かで力強い一冊です。
おすすめです!