みなさんは、美術館は好きですか?
ヤマモトはアート作品を見るのが大好きで、美術館や個展にも行ったりします☺️
まだ国内の美術館しか行ったことはありませんが、いつかルーヴルやメトロポリタンなど、海外の名だたる美術館にも行ってみたいです!
そんなアート好きにとって、とても心ときめくのが今回の一冊。
『楽園のカンヴァス』(著者:原田マハ) です。
読んでいると、まるでアートの世界を旅しているようで、日常から離れて本の世界に没頭できました!
こんな人におすすめ!
・美術をテーマにした本格ミステリーを探している人
・歴史的事実とフィクションが絡み合う物語を楽しみたい人
・作中作(小説の中に「もうひとつの物語」が出てくる作品)が好きな人
あらすじと補足
主人公は、大原美術館で監視員として働くシングルマザー・早川織絵。
思春期の娘との関係に悩みを抱えながらも、日々の仕事を淡々とこなしています。
ところがある日、勤務中に上司から突然呼び出され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵するアンリ・ルソーの絵画にまつわる大きな仕事を任されることに。
…と、ここまでが現代を描いた第1章。
第2章からは一転して舞台は過去へ。
若き日の織絵と、当時MoMAでアシスタントキュレーターを務めていたティムが登場し、ルソーの絵画に秘められた謎を解き明かしていく物語が展開します。
過去パートはティムの視点で描かれ、物語の中心は「作中作」として進行。
アート小説でありながら、美術史の知識や作品解釈をミステリー仕立てで読ませる構成になっており、読み応えたっぷりです!
印象に残った場面
▶ ぜひ画像検索を!
本作には有名な絵画が数多く登場します。
読んでいると「どの作品のことだろう?」と気になり、思わずスマホ片手に画像検索をしてしまいました。
実際の絵を確認しながら読み進めると、物語への理解が深まるだけでなく、より臨場感を持って楽しめます。
文字だけで想像するよりも、画家の筆致や色彩を目で確かめながら物語と照らし合わせることで、作品世界がぐっと立体的になるのです。
紙の上で完結させる読書ももちろん良いですが、今の時代ならではの読み方として「スマホ片手に読む」という方法はかなりおすすめ。
美術館を巡りながら小説を読むような感覚を味わえます!
▶ 作中作がおもしろい
ルソーの半生を描いた作中作がとても印象的でした。
小説の中にさらに別の物語を差し込むことで、単なるストーリー以上に読み応えが増し、作品全体に厚みが生まれています。
とくに、現代の物語と作中作が呼応するように配置されていて、ひとつの絵画をめぐる謎解きが立体的に浮かび上がってくる構成は巧みだと思いました。
「美術小説」というジャンルでありながら、伝記風の要素や歴史小説的な味わいも感じられるのは、この作中作のおかげです。
▶ 素敵な登場人物たち
ティムが「自分がルソーの友達だったなら…!」と思う場面が、とても印象に残りました。
実際にヤマモトも、まったく同じ気持ちで読んでいたので、強く共感してしまいました。
悩みながらも絵を描き続けるルソーの姿はどこか愛らしく、そんな彼を支えようとする周囲の人々の温かさが胸に沁みます。
芸術作品というと孤独な天才のイメージもありますが、この物語では「人とのつながりがあってこそ生まれる創造」が描かれていて、読んでいてとても心を打たれました。
登場人物それぞれが持つ優しさや心遣いが、ルソーという人物をより魅力的に見せてくれる…
そんな関係性の描き方が素敵で、読後もずっと余韻が残る場面でした。
総評
▶ 
最後の最後までわくわくしながら読み進められる、非常に満足度の高い作品でした。
ひとつの絵画を題材に、ここまで豊かに物語をふくらませられるのかと感心させられます。
アート小説というと敷居が高い印象を持つかもしれませんが、本作はミステリー仕立てでテンポよく進むので、絵画に詳しくない読者でも自然と引き込まれるはずです。
芸術作品の背景にある人間模様や時代の空気を感じられる点も、この小説ならではの魅力だと思いました。
原田マハ氏はこうしたアート小説を多数手がけており、本作をきっかけに他の作品にも触れてみたいと強く思いました。
絵画に興味がない方でもきっと楽しめる一冊。心からおすすめしたいです。