みなさんは、フィクションとノンフィクション、どちらが好きですか?
ヤマモトは本当はノンフィクション派で、実際にあった事件のルポなどに強く惹かれます。
ただし、不謹慎かも…と思うと「おもしろい!」とは素直に言いにくいのも事実。
その点、リアリティのあるフィクションなら創作物なので、感想を言いやすいですよね。
というわけで今回ご紹介するのは、ノンフィクションのようなフィクション作品。
『殺人鬼フジコの衝動』(著者:真梨幸子) です。

こんな人におすすめ!
・心理描写が濃い!サスペンス小説が好きな人
・犯罪の背景や人間の闇に興味がある人
・グロテスクな表現、アダルト描写が平気な人
あらすじと補足
主人公・森沢藤子は、未解決事件として語り継がれる「中津区一家惨殺事件」の唯一の生き残り。
その後の人生で、彼女がどのように「殺人鬼フジコ」へと変貌していくのかが描かれています。
物語は「この小説は、ある女の一生を描いたものである」という一文から始まり、フジコの周囲の人々が残した「手記」のような文体で進んでいきます。
淡々としているのに妙に生々しい…。
そんな独特の語り口が、不気味さを増幅させています。
また、アダルティーな表現や、人間をミンチにするような残酷描写も含まれているため、エログロ表現が苦手な方は要注意。
しかしながら、そうした生々しさこそが作品の迫力を生み、読後には重苦しい余韻を残しています。
印象に残った場面
▶ 文章が読みやすい!
とにかく読みやすくて、スッと頭に入ってくる文章でした。
「読みやすい文章と読みにくい文章の違いは何なのか?」と普段から考えてはいるのですが、正直まだうまく言語化できません😅
ただ、本作を読んでいて気づいたのは、まず一文一文が短く、句点でテンポよく区切られていること。
そして、会話文では「誰のセリフなのか」が迷わずわかること。
そのおかげで、内容がどんなに重くても読み疲れせず、最後まで集中して読めました。
こういう「読ませる力」も、作品の魅力のひとつだなと感じました。
▶ 実際の話かと錯覚してしまうほどリアル
「殺人鬼フジコ」と呼ばれる女性の生き様が、あまりにもリアルに描かれていて、
思わず「これって本当にフィクション?実際にあった事件なのでは?」と調べてしまいました。
もちろんフィクションなのですが、描写の細かさや人間の心理の掘り下げ方が生々しくて、まるで実在した人物の手記や、ノンフィクションの事件記録を読んでいるような感覚になりました。
そのリアリティが作品全体に重みを与え、読後も長く心に残りました。
▶ 心理描写がすごく上手
グループのボスに逆らえない雰囲気や、仲間はずれにされるかもしれないという危機感、陰湿なイジメ…。
そうした描写があまりにリアルで、読んでいて苦しくなりました。
ちなみにヤマモトは高校生でバイトを始め、1人で外食する機会が増えて
「なんだ、1人で食べてる人も多いし、1人でも全然大丈夫じゃん」と気づきました。
就職してから「1人でごはんとか絶対無理〜!マックとか1人で行けない無理〜!」
なんて言ってる40過ぎのブリブリもいましたけどね🤣
そういうのは例外なんだな、世の大人たちはあんまり群れたりしないんだな、と知りました。笑
大人になった今でこそ「1人でいる方がラク」と思えるようになりましたが、子どもの頃は「輪に入れない=死活問題」でしたね。
心理描写がすごく上手なので、昔を思い出しました。
今の記憶を残したまま過去に戻れたら、グループのボス女子のことなんて全然恐くないし、お昼も1人でゆっくり食べたいです!
総評
▶ 
とにかく続きが気になって、寝る間も惜しんで一気読み!
ストーリーは重く、エログロ要素も多いので、人を選ぶのは間違いありません。
でも、文章がとにかく読みやすく、引き込まれる力がものすごい。
だからこそ、気づけば最後まで一気に駆け抜けてしまいました。
読み手を選ぶ作品ですが、合う人にとっては間違いなく満点級の一冊だと思います。