『ガダラの豚【 Ⅱ 】』(中島らも)の書評アイキャッチ画像

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【Audibleで聴いてみた】ガダラの豚【 Ⅱ 】/ 中島 らも

こんにちは!ヤマモトサオリです。

みなさんは、苦手なものはありますか?
私は、とにかく虫が苦手です。
とくに、足がたくさんある系の虫は本当に無理です… 昔は触れたんですけどね、大人になるにつれてダメになりました(笑)

そんな私にとって、今回の作品はなかなかの試練でした。

今回は、Audibleチャレンジ2作目『ガダラの豚』の第2部、『ガダラの豚【 Ⅱ 】』(著者:中島らも)の感想です。

この記事では第1部の内容にも触れているので、これから読み始める方は、先にこちらの感想記事をどうぞ。

今回も第1部に続いて、Audibleで聴きました。
朗読は俳優の山内圭哉さんで、第2部の再生時間は8時間28分です。

第1部では日本が舞台でしたが、第2部では舞台がアフリカへと移り、物語が一気に広がります。

広大なサバンナを車で走る場面や、にぎやかなナイロビの街の様子などが次々と描かれ、聴いているうちに、まるで大生部たちと一緒にケニアを旅しているような気分になりました。

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こんな人におすすめ!

・アフリカ呪術の世界をのぞいてみたい人
・旅行記を読んでいるような臨場感がほしい人
・冒険小説とオカルト小説の両方が好きな人

あらすじと補足

『ガダラの豚』は、中島らもさんが『週刊小説』で1991年から1992年にかけて連載した長編小説です。
1993年に単行本として刊行され、翌1994年には日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞しました。
現在は集英社文庫から全3巻で出ていて、Audible版も3部に分かれています。

第1部では、アフリカの呪術医研究を専門とするタレント教授・大生部多一郎が、新興宗教にのめり込んだ妻の逸美を取り戻すために奮闘しました。
そして第1部の終盤、大生部一家はテレビ局の取材班とともにアフリカへ向かうことになります。

第2部では、いよいよ舞台がアフリカへと移ります。
大生部一家は、研究助手・道満、スプーン曲げ青年・清川、そしてテレビ局のスタッフ6人とともに旅立ちます。

目指すのは、ケニアとウガンダの国境近くにある村・クミナタトゥです。
クミナタトゥはスワヒリ語で「13」を意味し、村人全員が呪術師という村です。
ちなみに、クミナタトゥは実在しない架空の村です。

そこで一行は、大魔術師バキリに取材を申し込みますが、バキリにとって最大のタブーを犯してしまい、呪いの恐怖に追われることになる… というストーリーです。

印象に残った場面

セリフや表現が秀逸

中島らもさんの作品は、思わずクスッと笑ってしまうセリフや表現がたくさん詰まっているところが魅力です。

とくにおもしろいのが、通訳のムアンギの関西弁のセリフです。
ムアンギはケニア人ですが、大阪に留学していた経験があり、流暢な関西弁を話します。

なかでも私が好きなのは、ムアンギと清川のこんなやり取りです。

清川は、スプーン曲げができて得をすることといえばナンパに使えることだ、と公言している青年です。
その清川がサバンナでトムソンガゼルの群れを見て、今度生まれたらトムソンガゼルになる、と言います。

作中では、トムソンガゼルはまずオス同士が闘い、一番強いオスがハーレムのボスになってメスをすべて自分のものにする、負けたオスはハーレムに入れない… と説明されます。
それを聞いた清川は、自分がボスになればいいんだ、と言います。

そこでムアンギが言うのが、「あんたにそんな甲斐性があるかいな。それにな、トムソンガゼルの女の子は、スプーン曲げ見せたってついてきまへんで」というセリフです。
車内が大爆笑に包まれるこの場面は、とても平和で、おもしろいです。

また、「車はおならやゲップをさかんに吐きながら、夜のサヴァンナへ向かって走り出す」という表現も好きです。
車を擬人化したこの表現で、ガタガタと進む車の様子が目に浮かびます。
そんな表現の仕方があるのかと感心しました。

思えば私は、『告白』(著者:町田康)でも「弥五郎は、殺す奴は必ず殺す、と嘯きつつ、飯を食いつつ、仕込杖を振り回しつつ、屁をこくなど元気一杯であった」という一節が気に入っていました。
どうやら私は、こういう少し下品な表現が好きなのかもしれません。小学生男子か(笑)

スワヒリ語をちょっと覚えた

第1部の記事でも書きましたが、私は本作を4周聴いています。
そのおかげで、スワヒリ語を少しだけ覚えました。

たとえば、「ジャンボ、ハバリ・ガニ?」は「こんにちは、お元気ですか?」
「ンズリ・サーナ」は「とてもいいです」
「バリディ・サーナ」は「うんと冷たい」という意味です。

ちなみに「ハバリ・ガニ」は、直訳すると「どんな知らせ?」という意味なのだそうです。
それが「元気?」というあいさつになっているのは、なんだかおもしろいですよね。

思っていたケニアと違った

第2部で驚いたのが、ケニアの描写です。

広大なサバンナの様子はもちろんですが、作中では、首都ナイロビが栄えていて高層ビルが立ち並んでいること、豊かで飢えている人が少ないこと、高地にあるため意外と寒いことなども描かれています。

恥ずかしながら私は、ケニアと聞くと、サバンナや飢餓、難民といったイメージばかりを思い浮かべていました。
それは、外国の人が「日本といえば侍」と思い込んでいるのと似たようなものだと知り、衝撃を受けました。

『ガダラの豚』は、1991年から1992年にかけて連載された作品です。
30年以上前に書かれた作品なのに、私のイメージのほうがずっと古かったのです。

読み進めるうちに、本当にケニアを旅しているような気分になれたのも、第2部の大きな魅力です。

虫・虫・虫!

私にとって試練だったのが、虫の描写です。

作中で、ケニアの人たちが気軽に行くレストランとして紹介されるのは、民家の軒先のような場所です。
そこでは、ものすごい数のハエが飛び交っているという記述があります。

私は虫がとにかく苦手で、食べ物に1匹でも虫がとまったら、もう食べられないと思ってしまいます。
そんななか、アフリカに慣れている大生部はもちろん、逸美まで慣れた様子で、ウガリ(トウモロコシの粉をお湯で練った、ケニアの主食)を手でこねて食べているのです。
虫が大の苦手な私には、とても真似できそうにありません(泣)

本作では、虫が重要な意味を持ってきます。
その前触れなのか、第2部も虫の描写がなかなか強烈です。

壮大な蚊柱を見て「やばいね、これは。一発でマラリアだぞ」と言うシーンや、トムソンガゼルの死骸から這い出る大きなダニの群れの描写など、実際に目にしたらトラウマになりそうな場面がたくさんあります。

虫が苦手な方は、少し覚悟して読んだほうがいいかもしれません。

魅力的な登場人物たち

クミナタトゥの長老・オニャピデは、自分がバキリの呪いで死ぬかもしれない状況にありながら、体を張って大生部たち一行を守ろうとします。

大生部は何年も前にクミナタトゥで暮らしていたことがあり、オニャピデとは顔見知りです。
とはいえ、ほかのメンバーとは初対面ですし、日本人一行は命の危険よりもスケジュールや撮影を優先しようとします。
そんな一行のために命をかけるオニャピデの姿には、胸が熱くなりました。

ブンゴマの呪術医・オプルも粋な人物で、なんとか日本人一行を救おうと動いてくれる姿が素敵です。

振り返ってみると、第1部でも奇術師のミスター・ミラクルが、知り合ったばかりの大生部に頼まれ、逸美を新興宗教から救い出すために力を貸していました。

大生部には、どこか憎めないところがあります。
周りの人に「この人の力になりたい」と思わせる何かが、大生部にはあるのかもしれないと思いました。

総評

5 out of 5 stars

今回の『ガダラの豚【 Ⅱ 】』は、起承転結の「承」にあたる部分です。

第2部は、舞台がアフリカに移ったことで、第1部とはまったく違う空気の物語になりました。
呪いや虫など、目をそむけたくなるような過激な描写も多いですが、とにかくおもしろい作品です!

ホラーのような展開なのに、なぜか暗くならないのが不思議です。
それはきっと、ムアンギの関西弁や、おならやゲップをしながら走る車のように、中島らもさんならではのユーモアがあちこちにちりばめられているからだと思います。
重い場面の合間に思わず笑ってしまう瞬間があるので、最後まで楽しく聴くことができました。

一行がこの先どうなっていくのか、第3部も楽しみです。

🎧️ Audibleで聴いた感想

第2部でも、山内圭哉さんの朗読は最高でした。

セリフ以外のナレーション部分は、コミカルな場面でも恐ろしい場面でも、低い声で淡々と読み上げられています。
その読み方が、耳にとても心地良いのです。

一方で、セリフになると、山内さんの少しもったりとした喋り方が、ムアンギのキャラクターや、大生部の憎めない人柄にばっちりハマっています。
とくにムアンギの関西弁に関しては、大阪出身の山内さんが話すからこそ、とても自然に聞こえるのだと思います。

スワヒリ語は、文字で読んでいたら読み飛ばしていたかもしれませんが、耳で何度も聴くうちに自然と覚えてしまいました。
これもAudibleならではの楽しみ方だと思います。

再生速度は、第1部と同じく標準の1.0倍がちょうどよかったです。

山内さんのナレーションと個性豊かなセリフの掛け合いは、耳で聴いてこそ味わえる魅力です。
気になった方は、ぜひAudibleで『ガダラの豚』の世界に浸ってみてください。

Audible で聴いてみる

第3部では、一行がアフリカから帰国し、再び日本が舞台となります。
感想はこちらの記事でまとめています。

  • この記事を書いた人

ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。