『ガダラの豚【 Ⅲ 】』(中島らも)の書評アイキャッチ画像

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【Audibleで聴いてみた】ガダラの豚【 Ⅲ 】/ 中島 らも

こんにちは!ヤマモトサオリです。

みなさんは、本を読むとき、何を基準に選びますか?
私はいろんなジャンルの本を読みますし、サスペンスやホラーも大好きです。
それでも、やっぱり明るい雰囲気やハッピーエンドの物語に惹かれます。
読後感が悪いとわかっている本は、なんとなく避けてしまうことが多いです。

今回は、Audibleチャレンジ2作目『ガダラの豚』の第3部、『ガダラの豚【 Ⅲ 】』(著者:中島らも)の感想です。

この記事では第1部・第2部の内容にも触れているので、これから読み始める方は、先にこちらの感想記事をどうぞ。

今回も第1部・第2部に続いて、Audibleで聴きました。
朗読は俳優の山内圭哉さんで、第3部の再生時間は6時間39分です。

第3部では、日本へ戻ってきた大生部一家のまわりで、再び不穏な出来事が起こり始めます。
やがてバキリとの対決の舞台となるテレビ局は地獄絵図と化し、物語は壮絶なクライマックスへとなだれ込んでいきます。

この場面はAudibleで聴くと臨場感たっぷりで、ハラハラが止まりません。
Audibleには30日間の無料体験があるので、ぜひ試してみてくださいね。

Audible で聴いてみる

こんな人におすすめ!

・アフリカ呪術が日本を襲う物語を読みたい人
・アクション映画のような読書体験がしたい人
・「呪い」が日常に入り込む怖さを味わいたい人

あらすじと補足

第1部では、アフリカの呪術医研究を専門とする「タレント教授」の大生部多一郎が、新興宗教にのめり込んだ妻・逸美を取り戻すために奮闘しました。

第2部では舞台がアフリカへ移り、大生部たちは大魔術師バキリの呪いの恐怖に追われることになりました。
通訳やテレビクルーなど6人もの犠牲を出しながらも、バキリのもとから娘の志織を取り戻したのでした。

第3部は、志織を連れて大生部一家が日本へ戻ってきたところから始まります。
ところが、穏やかな日々は長く続きません。
やがて、アフリカ取材を行ったテレビ番組の関係者の周りで次々と奇怪な事件が起こり、ついには死者まで出てしまう… というストーリーです。

第3部では猟奇的な殺人事件が相次ぐため、第1部・第2部とはまた違ったグロテスクさがあります。
好みはかなり分かれると思いますが、ただ残酷なだけの小説ではなく、読後にはどこか爽やかさも残る作品となっています。

印象に残った場面

耳で聴くからこその勘違い

作中には「板井」という刑事が登場するのですが、Audibleで聴いていると、「いたい」という音が「遺体」に聞こえてしまいました。

初めて聴いたときは、ぼんやりしていたタイミングで「いたい」「刑事」という言葉が続けて耳に入ってきたので、「また誰か亡くなったの?」と混乱しました(笑)

文字で読めばすぐに分かることでも、耳だけで追いかけていると、思わぬ勘違いが起こるものですね。
中島らもさんも、この小説が30年以上たってから音声化され、こういった勘違いが生まれているとは、きっと想像していなかったでしょうね。

捜査と報道のずさんさが怖い

物語の途中である事件が起こり、その場に居合わせた人物が容疑者として疑われてしまいます。

刑事は「状況証拠はそろっている」と言います。
でも私は以前、「自分でつけた傷と他人につけられた傷とでは形が違う」という話を聞いたことがあります。

作中では、凶器に容疑者の指紋が残っていたかどうかは書かれていません。
ただ、状況証拠を重視するのであれば、傷の形や凶器の握り方、血の付き方などは、むしろ「この人は犯人ではない」ことを示す手がかりになるのではないかと感じました。

さらに怖いと思ったのは、報道の姿勢です。
はっきりした証拠もないまま、別の事件とあわせて「同一犯ではないか」「犯人はこの人物か」と報じられてしまいます。

しかも、「容疑者が勾留されている間に次の事件が起きれば、そこで初めて無実が証明できる」というくだりがあり、さすがにそれはないだろうと思いました。

とはいえ、これは30年以上前に書かれた小説の中の話です。
当時の捜査がどのようなものだったのかは分かりませんし、フィクションにこうしたツッコミを入れるのは野暮かもしれません。

それでも、ちょうどタイムリーにも、死刑執行後の事件について元死刑囚の無実の可能性を示す新証拠が見つかったというニュースを目にしたので、背筋が寒くなりました。

聴くたびに新しい発見がある

正直なところ、私は聴き逃している部分がかなりありました。

そのため繰り返し聴いているのですが、そのたびに「こんな場面があったんだ」という発見があります。

特に驚いたのは、清川がダウジングロッドを思いもよらない使い方をする場面です。
かなり衝撃的なシーンなのに、私が気づいたのは、なんと4回目に聴いたときでした。

1回目で物語の大筋をつかみ、2回目以降で細かな描写を味わう。
そんな楽しみ方ができるのも、情報量が多く、何回聴いても飽きない本作ならではかもしれません。

…って、私が聴き逃がしていただけなんですがね。

総評

5 out of 5 stars

今回の『ガダラの豚【 Ⅲ 】』は、起承転結でいえば「転」と「結」にあたる部分です。

第1部・第2部とは雰囲気がまた異なり、多くの人がむごい死を遂げるため、平和な空気はほとんどありません。

それでも、おどろおどろしい展開のなかで、大生部一家の奮闘ぶりにはとてもすがすがしいものがあります。
何があってもブレない大生部、母としてたくましさを増した逸美、アフリカで精悍さを増した息子の納。
どうにかみんな生き残って!と応援したくなります。

冒頭で、読後感が悪い本は避けがちだと書きましたが、本作はたくさんの死が描かれるにもかかわらず、聴き終えたあとに暗い気持ちだけが残ることはありませんでした。
その理由は、大生部たちの人間くささや、ところどころに挟まれる中島らもさんらしいユーモアにあると思います。

3部作を通して聴くと、新興宗教との対決を描いた第1部、アフリカでの冒険を描いた第2部、そして日本を舞台にした第3部と、巻ごとにまったく違う味わいがあります。

なかでも一番好きなのは第2部です。
ムアンギの話し方や、大生部たちとの掛け合いが楽しく、私がおそらく一生行く機会のないアフリカの様子が細かく描かれているところにも引き込まれました。

3部作を聴き終えて、改めてタイトルの由来が気になりました。
「ガダラの豚」は、新約聖書「マタイによる福音書」の逸話からきているそうです。
イエスが追い出した悪霊が豚の群れに乗り移り、豚たちが崖を駆け下りて湖に落ち、死んでしまうという話です。

バキリの呪いによって操られる人々を、豚に見立てたのでしょうか。
よく考えられたタイトルだと思いました。

さらに、第1部で私を戸惑わせた密教徒の師弟の場面は、タイトルの由来となった聖書の一節から始まっていました。
その師弟が、第3部で再び登場します。
最後まで聴いて、ようやく冒頭の意味がつながったのでした。

🎧️ Audibleで聴いた感想

中島らもさんが2004年に亡くなってから20年以上がたった2025年、本作のAudible版の配信が始まりました。

朗読の山内圭哉さんは、Audibleの配信開始にあたってのコメントで、アフリカ取材から帰ってきた中島らもさんが、現地の主食ウガリがおいしかったとのんびり話していたと振り返っています。
そして当時は、こんなに恐ろしく、誰もが夢中になれるエンターテインメント小説になるとは思っていなかったそうです。
さらに、中島らもさんの小説を声に出して読むのは生まれて初めてで、収録中も先を読みたい衝動に駆られっぱなしだったと語っています。

アフリカの描写がとても鮮明なので、丁寧に取材をしたのだろうと思っていました。
このコメントを読んで取材の様子が目に浮かび、作中の虫の描写なども、中島らもさんが現地で実際に見聞きしたことが元になっているのだろうと思うと、ゾワゾワしました。

再生速度は、第1部・第2部と同様、標準の1.0倍がちょうどよかったです。
全3巻、合わせて22時間42分。
倍速ではないので記載の時間どおりですが、ずっと聴いていても、何回聴いていても飽きませんでした。

過激な描写が大丈夫な方には、本当におすすめの作品です!

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  • この記事を書いた人

ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。