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小栗虫太郎 本 🙂

【文庫本で読んでみた】黒死館殺人事件 / 小栗 虫太郎

こんにちは!ヤマモトサオリです。

みなさんは「日本三大奇書」をご存じでしょうか。

  • 『ドグラ・マグラ』(著:夢野久作)
  • 『虚無への供物』(著:中井英夫)
  • そして、今回ご紹介する『黒死館殺人事件』(著:小栗虫太郎)です。

『ドグラ・マグラ』が「奇書」と呼ばれるのは、たしかに頷けます。
読む前から身構えてしまうような雰囲気がありますし、表紙のインパクトもなかなかのものです。

『虚無への供物』も、タイトルからして一筋縄ではいかなそうな印象を受けます。

それに比べて『黒死館殺人事件』は、タイトルだけを見ると、ごく一般的なミステリー小説のように感じられます。
なぜこの作品が「奇書」とされているのか、その理由が知りたくなり、読んでみることにしました。

あらすじと補足

黒死館と呼ばれる降矢木(ふりやぎ)家の屋敷で、当主の降矢木算哲(さんてつ)が謎の自殺を遂げます。
その後、屋敷の住人たちが次々と不可解な死に見舞われていきます。

検事・支倉(はぜくら)の依頼を受けて調査に乗り出すのが、刑事弁護士の法水麟太郎(のりみず りんたろう)です。

事件は神秘思想や宗教的な象徴と深く結びついていることがわかり、法水は論理と膨大な知識を武器に、連続殺人の真相を追っていきます。

法水と支倉は、シャーロック・ホームズとワトスンのような関係といえば、イメージしやすいかもしれません。

作者の小栗虫太郎は1901年生まれの探偵小説家で、本作は1934年(昭和9年)に雑誌『新青年』で連載されました。
昭和初期に書かれた作品で、裏表紙によると、あの江戸川乱歩も絶賛したそうです。

その裏表紙には、「奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む」と書かれています。

エンサイクロペディック…
初見では身構えてしまいますが、要するに「百科事典並みの知識で謎を解く」ということのようです。
わざわざ横文字で書かなくてもいいのに… と思いました(笑)

印象に残った場面

昔はアレが簡単に手に入った!?

本作が書かれたころの日本では、今では考えられないようなものが、意外と身近にあったようです。

有名なのが「ヒロポン」で、その正体は、なんと覚醒剤です。
本作の発表から7年後の1941年(昭和16年)に発売されて、眠気や疲れを取る薬として普通に売られていました。
当時は危険性がほとんど知られておらず、戦時中は兵士や工場で働く人たちにも配られていたそうです。
その後、中毒になる人が増えて社会問題となり、1951年(昭和26年)に覚醒剤取締法ができて、ようやく厳しく取り締まられるようになりました。

本書にも、「青酸加里なんて、小学生の昆虫採集箱の中にもある」というセリフが登場します。
青酸カリといえば、ミステリーではおなじみの猛毒です。
それが子どもの持ち物の中にあって当然のように語られていることに驚きました。

ちなみに今では、昆虫を標本にするための「毒瓶」には、青酸カリよりずっと毒性の低い「酢酸エチル」という薬品を使うのが一般的だそうです。
今の感覚では考えられないことが当たり前だった時代なのだと、改めて感じました。

挿絵の手書き文字がかわいい

作中には、挿絵がいくつか登場します。
たとえば、縦長の枠の中に古代の壁画や版画のような絵が描かれ、それぞれに手書きで名前が添えられているものなどです。

正直なところ、絵が何を表しているのかはよくわかりませんでした。
それでも、添えられた手書き文字にどこか愛嬌があって、とてもかわいらしいのです。

挿絵画像の掲載は控えますが、気になる方はぜひ本でチェックしてみてください。

漢字の読ませ方が斜め上すぎる

たとえば、「魁異」という漢字に「グロテスケリ」というルビが振られています。
「グロテスク」と古語の「なりけり」を組み合わせた造語でしょうか。
はっきりとした意味はわかりませんが、和洋を混ぜた言葉の作り方に感心しました。

また、「超頂点」と書いて「ウルトラ・クライマックス」と読ませる場面もあり、このセンスはとても気に入りました。

本作には、こうした独特なルビが数多く登場します。
漢字で意味を見せながら、カタカナの読みで西洋の言葉の響きを重ねる書き方は、ヨーロッパの学問や文化の知識を次々と披露する法水の語り口にもよく合っています。

現代でも、「本気」と書いて「マジ」と読ませるような当て字は、漫画や歌詞などでよく見かけますよね。
昭和初期の小説で、すでにこうした言葉遊びが使われていたことに驚きました。

総評

1 out of 5 stars

奇々怪々で難解な、いかにも「奇書」らしい作品でした。

法水の推理には、神学や占星術、化学、文学など、あらゆる分野の知識が次々と登場します。
事件の謎よりも知識の洪水に圧倒されてしまい、ミステリーなのに「犯人は誰だろう」と考える余裕がほとんどありませんでした。

正直なところ、わざと難しい言葉や風変わりな表現を並べて、読者を驚かせようとしているようにも感じました。
ただ、最初から最後までこの調子を貫いているので、その徹底ぶりこそがこの作品の個性であり、「奇書」と呼ばれる理由なのだと思います。

根強いファンがいる名作だとは思いますが、私には難しすぎて、日本語なのに内容がほとんど頭に入ってきませんでした。
文字を追うだけで精一杯です。
しかも500ページ以上あるうえに改行もほとんどなく、読み終えるまでに2週間以上かかってしまいました。

今回かなり辛口の感想になったのは、この読みにくさと難解さが理由です。
物語を楽しむ前に、文章を読み解くことで力尽きてしまい、面白さを感じるところまでたどり着けませんでした。

知識の海に溺れる感覚を味わってみたい人や、「難しい本ほど燃える!」という人には、挑戦しがいのある1冊だと思います。

📚 活字がしんどい人には「漫画版 黒死館殺人事件」がおすすめ

原作は500ページ以上ある長編で、難しい言葉や専門的な知識が次々と出てきます。
「気になるけれど、いきなり原作を読むのはハードルが高い」という人は、漫画版から入るのもひとつの方法です。

漫画版も一緒に読めば少しは理解しやすくなるかなと期待したのですが…
正直、漫画を読んでも結局よくわかりませんでした(汗)

それでも、絵のおかげで情景はイメージしやすかったので、「まずは漫画から読んでみる」というのはアリかもしれません!

屋敷の不気味な雰囲気や、登場人物の顔と名前を先に頭に入れておくと、原作を読むときの助けになりそうです。

漫画版は、名作文学を漫画化した「まんがで読破」シリーズの1冊です。
原作が気になっている人は、まずこちらで物語の流れをつかんでみてはいかがでしょうか。

黒死館殺人事件を漫画で読む

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ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。