こんにちは!ヤマモトサオリです。
みなさん、お仕事は好きですか?
好きなことを仕事にしている方もいれば、生活のために働いている方、今まさにお仕事を探している方や、学生さんもいらっしゃるかもしれませんね。
私はというと、今の仕事が嫌いなわけではないのですが、朝起きてから出勤するまでが少しだるいです(笑)
今は体力的に「やれやれ、仕事に行くのが面倒だな」と思う程度ですが、20代の頃は精神的に仕事がしんどい時期がありました(汗)
出勤するふりをしてそのまま快速電車に乗り、冬の小樽の海をぼんやり眺めながら一人で泣いたこともあります。
関東で働いていたときには、出勤前に吐き気と涙が止まらなくなったことも…
仕事は大変なことも多いですが、働く人にはそれぞれ、頑張る理由や夢、想いがあるものですよね。
今回ご紹介する『店長がいっぱい』(著者:山本幸久)は、そんな「働く人たちの背景や想い」に焦点を当てた物語です。
こんな人におすすめ!
・笑えて心温まる群像劇が好きな人
・読後にちょっと前向きな気持ちになりたい人
・軽快なテンポの小説を味わいたい人
あらすじと補足
タイトルも表紙も、とてもかわいらしい一冊です。
私はこの本を見つけたとき、1軒のお店に店長がたくさんいる、コメディタッチの『世にも奇妙な物語』のようなお話だと思い込んでいたのですが、まったく違いました(笑)
舞台は「友々家(ゆうゆうや)」という、国内外に127店舗を展開する「他人丼」のチェーン店。
そこで働く店長たち一人ひとりにスポットを当てた連作短編集です。
「他人丼」とは、親子丼の鶏肉の代わりに牛肉や豚肉を使い、卵でとじた丼のこと。
鶏(親)と卵(子)の組み合わせではないので、「他人」丼と呼ばれています。
名物の他人丼の決め手は、職人技ともいえるトロトロの卵だそうで、とてもおいしそうですね。
店長たちの顔ぶれは、左遷されてきた人、別の業界から転職してきた人、離婚を経て働く主婦、家出をしてきた青年など、本当にさまざま。
家族のために働く人、夢を追う人、過去の挫折から立ち直ろうとする人と、境遇も働く理由も一人ひとり違います。
それぞれが悩みや想いを抱えながら日々の仕事と向き合う姿が描かれていて、「チェーン店の店長」という枠を超えたリアルな人間ドラマに引き込まれます。
印象に残った場面
みんな何かしらの悩みや傷を背負って生きている
事業に失敗し、家族を養うために店長を続ける男性や、自分の店を持つ夢のために懸命に働く女性など、登場人物たちの背景はなかなか現実的でシビアです。
さらに店長たちは、売上の伸び悩みやアルバイトとの人間関係、お客さんからの無理な要求など、仕事上のトラブルにも次々と見舞われます。
会社の方針と現場の事情の間に立つ「店長」ならではの板挟みもリアルで、接客業やチェーン店で働いた経験がある方なら、思わずうなずく場面が多いのではないでしょうか。
「店長」という肩書きの裏には、明るい笑顔だけでなく、生活のための苦悩や将来への葛藤が隠れているのだと感じさせられました。
普段なにげなく利用しているチェーン店でも、カウンターの向こうでは一人ひとりが自分の人生を抱えながら店に立っている。
そう思うと、いつもの「いらっしゃいませ」が少し違って聞こえてきそうです。
それでも店長たちは、迷ったり落ち込んだりしながらも、毎日お店に立ち続けます。
すべての問題がきれいに解決するわけではありませんが、それぞれが小さな一歩を踏み出していく姿に、読んでいるこちらも励まされます。
そして泣けます!
それぞれの店長のストーリーが一部繋がっている
基本的には1話ごとに完結する構成ですが、読み進めていくと、それぞれの話が少しずつ繋がっていることに気づきます。
たとえば、ある店舗の話に出てきた謎のおじちゃんの正体が、別のエピソードで「この人だったのか!」とわかる場面があったり。
ある店長が出した企画が、のちに別の店舗の話で順調に進んでいる、ということがわかったり。
こうした小さなつながりを見つけるたびに、バラバラだったピースがはまっていくような楽しさがあります。
1話ずつ区切って読める手軽さがありながら、読み終えると1つの大きな物語を読んだような満足感も味わえるのが、この作品ならではの面白さです。
最初は「不完全燃焼かも」と感じた話も、後半で思わぬ形で回収されるので、だんだんと登場人物たちが身近に感じられてきます。
読み進めるうちに、以前の話の店長が再び登場すると「ちゃんと前に進んでいるんだな」と、つい応援したくなりました。
店長たちのその後をそっと見守っているような、あたたかい気持ちになれます。
伏線のようなつながりを楽しむためにも、この本は最初から順番に読むのがおすすめです。
友々家のCMソングが不気味
いい話なのに、CMソングが不気味すぎる件。
友達以上になぁりたいわぁ
なぁれるかしぃらぁ なれるわよぉぉ
ユゥウウユゥウウユゥウウユゥウウ
ユウウゥユウゥウユウウゥユウゥウ
友々家アァアアァア
怖い、怖い(笑)
総評
ネットのレビューでは、「オチがない」という低評価も見かけました。
たしかに、奇想天外などんでん返しや、すっきりとした結末を期待して読むと、そう感じるかもしれません。
ですが、前述のとおりエピソード同士がゆるやかに繋がり、物語全体で一つの世界を形づくっているので、私は「オチがない」とは思いませんでした。
1話ごとにきっちりとした決着がつかないからこそ、店長たちの人生が物語の外でも続いていくように感じられ、それがかえってリアルに思えました。
むしろ、連作短編ならではの構成や、人間臭い登場人物たちを通して描かれる「人生の断片」こそが、この作品の魅力です。
読後にはじんわりと余韻が残り、「今まで読んだどの本とも違う」と強く感じました。
派手な出来事が起こるわけではないのに、気づけば最後まで夢中で読み進めていた。
そんな不思議な読み心地の一冊です。
仕事帰りの電車の中や寝る前のひとときに、1話ずつゆっくり味わうのもおすすめです。
心に残る一冊として、自信を持っておすすめします!
