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本 結城真一郎 🙂🙂🙂

【単行本で読んでみた】#真相をお話しします / 結城 真一郎

こんにちは!ヤマモトサオリです。

みなさんは、長編小説と短編小説、どちらが好きですか?
私は… どちらかというと… どちらも好きです(笑)

長編は、物語の世界にどっぷり浸れるのが魅力。
ただ、読み始めるときは「これからこの分厚い本を読むぞ」という覚悟が必要ですよね。

短編集は、すぐに読み終わって少し物足りなく感じることもありますが、軽い気持ちで手に取れるのがいいところです。

さて今回は、そんな短編集から1冊。
『#真相をお話しします』(著者:結城真一郎) をご紹介します。

タイトルの「#」は、SNSでおなじみのハッシュタグのこと。
その名のとおり、SNSや動画配信など、今の時代ならではの題材が詰まった1冊です。

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こんな人におすすめ!

・現代的テーマを取り入れたミステリーに興味がある人
・SNS感覚で読める新感覚ミステリーを探している人
・予想を裏切る「どんでん返し」が好きな人

あらすじと補足

全部で5編を収録した、現代ミステリーの短編集です。

それぞれ独立した物語ですが、共通しているのは「日常に潜む違和感」です。

一見ありがちな設定から始まり、「こういうオチだろう」と思い込んだ瞬間に見事に裏切られる。
そんなどんでん返しが、どの話にも用意されています。

題材は、中学受験、マッチングアプリ、リモート飲み会、YouTuberなど、令和の時代には身近なものばかり。
自分の周りでも起こりそうだと錯覚するほどのリアルさです。

現代の日本で実際に起こっても不思議ではない、「身近に潜むゾクゾク感」を味わえる短編集。

ちなみに単行本は2022年に新潮社から刊行され、2024年には新潮文庫版も出ています。

印象に残った場面

『#拡散希望』という話

全5編のうち、私が一番おもしろいと思ったのが『#拡散希望』です。
短編集なので、今回はこの話にスポットを当てて紹介します。

舞台は、長崎の沖合に浮かぶ小さな島。島民は150人ほどで、小学校の全校生徒はたった4人です。
そのうち3人は東京から移住してきた家族の子どもで、島生まれ島育ちは女の子1人だけ。

主人公は、移住組の少年。
物語はこの少年の視点から、「僕」という一人称で語られます。

主人公の家は教育方針がとても厳しく、スマホやゲームは禁止、テレビも1日30分まで。
そんな主人公と友達の前に、島育ちの女の子が買ってもらったばかりのiPhoneを持ってきて、「一緒にYouTuberにならない?」と誘うところから物語が動き出します。

ところが同じ日、島にやって来た派手な見た目のYouTuberが、本土で殺害される事件が発生。
その日を境に、優しかった島の人たちの態度が少しずつよそよそしくなっていきます。
のどかな島の暮らしに、じわじわと広がる違和感。
この「何かがおかしい」という感覚が、物語全体を引っぱっていきます。

ちなみに冒頭は、成長した主人公がカメラに向かい、ある殺人事件の“真実”を明かそうとする場面から始まります。
いったい何が起きたのか、最初から先が気になる構成です。

この作品は、本書に収録される前に第74回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞しています。
新潮社の公式サイトでは『#拡散希望』を全文試し読みできるので、気になる人はまずそちらから読んでみるのもおすすめです。

小説に「iPhone」が出てくる新鮮さ

小説の中に「YouTuber」や「iPhone」といった言葉が出てきたとき、私は少し衝撃を受けました。

もちろん今では当たり前の言葉ですが、私は昭和生まれの平成育ち。
どちらかというと、昔の小説に出てくる「ポケベル」や「公衆電話」といったレトロな言葉を見つけて喜ぶタイプなので、余計に新鮮に感じたのかもしれません(笑)

おもしろいのは、作中の子どもたちにとっても、iPhoneが新鮮な存在だということ。
スマホを持っていない主人公と友達にとって、島育ちの女の子が持ってきたiPhoneは初めて見る最新の道具。
写真が撮れて、動画まで観られることに目を輝かせます。
私たちが当たり前に使っているものを、子どもたちの目を通して見直すような、不思議な感覚になりました。

著者の結城真一郎さんは1991年生まれで、私とほぼ同世代。
大のYouTube好きで、インタビューでは作中に人気YouTuberへのオマージュを込めたことも語っています。
ガラケーからスマホへ、テレビからYouTubeへ。そんな移り変わりを肌で感じてきた世代だからこそ描ける、リアルな空気感。
それが物語の説得力につながっているのかもしれません。

ちなみに、この短編集にはほかにも現代ならではの題材が登場します。
中学受験と家庭教師を描いた『惨者面談』、マッチングアプリが題材の『ヤリモク』、精子提供をめぐる『パンドラ』、リモート飲み会での三角関係を描いた『三角奸計』。
どれも令和らしさ全開のエピソードです。

キラキラネーム

主人公の名前は「珠穆朗瑪(チョモランマ)」。
世界一の子に育ってほしいという願いから、世界最高峰の山の名前が付けられたのだそう。
友達の男の子は「砂鉄(さてつ)」、女の子は「口紅(ルージュ)」。
主人公が砂鉄のことを「変な名前だ」と思いつつ、自分も人のことは言えないと自覚しているのが、なんともおかしいところです。

一方、島育ちの女の子の名前は「凜子(りんこ)」。
個性的な名前を持っているのは、移住組の3人だけです。

小説とはいえ、このネーミングはさすがに… と半分引きながら読み進めました(笑)

キラキラネームといえば、2025年5月に改正戸籍法が施行されて、戸籍に名前の読み仮名も記載されるようになりました。
名前の読み方は一般に認められているものにしなければならない、という基準も設けられています。
現実でも名前の読み方が見直されつつある今、作中の名前はいっそう強烈に感じられます。

でも、ご安心を。
こうした名前にもちゃんと意味があって、物語の真相へとつながっていきます。
名前の由来に注目しながら読むと、より楽しめるはずです。

最後はきっと読み返したくなる

ほかの話は「こういう展開かな?」と予想しながら読めましたが、『#拡散希望』だけはまったく先が読めず。

序盤はなかなか状況がのみ込めず、若者の話についていけない大人の気分… と思いながら読み進めました。
ところが、真相を知ったうえで読み返すと、伏線がきちんと回収されていて、すとんと腑に落ちたんです。

たとえば、主人公の家にある「その日の出来事を母親に報告する時間」や「入ってはいけない部屋」といった、少し変わった決まりごと。
iPhoneの使い方を教わる何気ない会話や、友達の女の子のちょっとした振る舞い。
読んでいる最中は気にも留めなかった場面が、あとから次々と意味を持ちはじめます。
2回目は、1回目とはまったく違う物語に見えるはず。

結末は、読者の想像に委ねられる形なので、好みは分かれると思います。
YouTubeの視聴者に問いかけるような終わり方で、読んでいる私たちも、いつの間にか画面の向こうの視聴者の一人にされている。
そんな感覚になり、私としては、これはこれでアリだなと思えました。

同時に、他人の人生を「おもしろいコンテンツ」として楽しむことの怖さも感じさせる結末。
SNSや動画を日常的に見ている今だからこそ、他人事とは思えないラストです。

総評

3 out of 5 stars

本書は発売当初からテレビで紹介され、2023年には本屋大賞にもノミネート。
2025年には、大森元貴さん(Mrs. GREEN APPLE)と菊池風磨さん(timelesz)のダブル主演で実写映画化もされ、大きな話題になりました。

読み終えたあとも、登場人物たちのその後をあれこれ想像できて、全体を通して楽しく読めました。

ただ、話によっては詰めが甘く、不完全燃焼に感じるものも。
それでも、前述したとおり『#拡散希望』は本当におもしろかったです。

普段、本をあまり読まない人や、SNS・動画配信に慣れ親しんだ若い世代にも手に取りやすい1冊。
まずは『#拡散希望』だけでも読んでみていただきたいです。

🎧️ 本作はAudibleでも配信中!

『#真相をお話しします』は、Audibleでも配信されています。
朗読は間島淳司さん、再生時間は5時間51分で、本1冊をまるごと朗読した完全版です。

5編はそれぞれ独立した短編で、平均すると1編あたり70分ほど。
1日1編ずつ聴き進めるのにもちょうどいい長さです。
通勤や家事の合間など、本を開けない時間にも楽しめます。

私は今回、単行本で読みましたが、耳で聴くとまた違った臨場感がありそうです。
本で読んだ人も、聴き比べてみると新しい発見があるかもしれません。

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ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。