こんにちは!ヤマモトサオリです。
みなさんは、デパ地下に行くとついふらっと寄り道してしまいませんか?
ショーケースに並ぶお惣菜やスイーツを眺めているだけで、なんだか楽しい気分になりますよね。
今回はシリーズ第2作、『アンと青春』(著者:坂木司)です。
デパ地下の和菓子店が舞台のミステリーですが、血なまぐさい事件は一切なし。
人が亡くなるような事件ではなく、和菓子にまつわる謎を解いていく作品で、安心して読めるほっこり系の物語です。
前作『和菓子のアン』については、こちらの記事で紹介していますので、あわせてどうぞ。
和菓子店「みつ屋」で働き始めたアンちゃんが、個性豊かな先輩たちに囲まれながら奮闘した前作。
続く本作では、アンちゃんの「青春」にもう少し踏み込んだ物語が展開されます。
Audible版も配信されているので、通勤中や家事の合間に「聴く読書」で楽しむのもおすすめです。
こんな人におすすめ!
・甘酸っぱい青春を、もう一度味わいたい人
・人とのつながりに温かさを感じたい人
・爽快な謎解きが好きな人
あらすじと補足
舞台はデパ地下の和菓子店「みつ屋」。
ここでアルバイトをしているのが、主人公のアンちゃんです。
働き始めて8か月。
まだ失敗することもありますが、個性的な先輩や仲間たちに囲まれながら、少しずつ成長していきます。
本作で描かれるのは、店の常連客が抱える小さな謎や、仕事を通して出会う人々との交流。
和菓子に込められた意味や季節ごとの行事も物語に自然に織り込まれていて、読み進めるうちに和菓子の奥深さを知ることができます。
「謎解き」と「お仕事小説」が同時に楽しめる一冊。
登場人物同士のやり取りから、働くことの喜びや、人と関わることの大切さが伝わってくる作品です。
印象に残った場面
京都へ旅行
アンちゃんが京都へ旅行するシーンがあります。
清水寺周辺のにぎやかな雰囲気や、名店の和菓子の描写を読んでいるうちに、私も京都へ行きたくなってしまいました(笑)
中でも印象に残ったのは、アンちゃんの友達がつぶやいた、
「ここってマジで歴史上の人物がいたところなんだよね。そういう人たちって、ほとんど架空のイメージだった」という言葉。
それを受けてアンちゃんは、『源氏物語』に出てくるお菓子を今でも食べることができ、歴史上の人と同じ味を分かち合えるのだと感じる場面があります。
『源氏物語』には、「椿餅」というお菓子が登場します。
椿の葉で餅をはさんだ和菓子で、日本最古の餅菓子の一つともいわれ、今でも冬の終わりごろになると和菓子店に並びます。
千年以上も前の人々と「食」を通じてつながれる。
そう考えると、なんだか胸が熱くなりますね。
桜井さん
前作にも登場した、大学1年生のアルバイト・桜井さん。
元ヤンキーで、サバサバとした性格の、とても魅力的なキャラクターです。
そんな桜井さんが学生結婚したことが、サラッと、それはもうサラッと書かれていて、とても驚きました!
桜井さんの結婚について書かれているページをすっ飛ばしてしまったのかと思い、最初から読み直して確認してしまいました(笑)
全体的に少女漫画のような空気感のある作品なので、もし誰かが結婚するなら、プロポーズや結婚式のエピソードでたっぷり1話は使うだろうと思い込んでいました。
少なくとも、周りの人たちが驚いたりお祝いしたりする場面くらいはあるはず、と。
桜井さんは脇役ながら、名前や人物像がしっかり描かれているキャラクター。
だからこそ、結婚という大きな出来事があっさり済まされていることに、少し違和感を覚えました。
とはいえ、この物語はあくまでアンちゃんの目線で語られるもの。
周りの人の人生の節目でさえ、アンちゃんにとっては日常の一コマにすぎないのかもしれません。
自分のことで精一杯で、まだ周りに目を向ける余裕がない。
そんな若さゆえの視野の狭さも、ある意味では「青春」らしさなのではないでしょうか。
作者の坂木さんがそこまで意図して書いたのかは分かりませんが、私はそう解釈することで、このあっさりとした描き方にも納得がいきました。
嫁いびりと熨斗
意地の悪いお姑さんが嫁いびりをするシーンは、読んでいて気分のいいものではありませんでした。
せっかくの甘くてきれいな和菓子に、チクチクとした嫌味を込めてくるなんて、あまりにも意地が悪すぎます。
その後の展開にも、どこか後味の悪さが残ります。
現実にも「こういう人、いるいる…」と妙にリアルに感じてしまい、余計にモヤモヤしました。
一方で、この章では熨斗(のし)の種類や使い分けについて丁寧な解説があり、「なるほど、そんな違いがあるのか」と勉強になる部分も。
例えば、ほどいて何度でも結び直せる「蝶結び」の水引は、出産や入学など何度あってもうれしいお祝いに。
一度結ぶとほどけない「結び切り」は、結婚やお見舞いなど、一度きりであってほしい場面に使われます。
これは日常生活でも役立ちそうな知識ですね。
アンちゃんと一緒に、ちょっと賢くなれた気がします。
総評
読み終えた直後は「楽しかった」という気持ちが強く、iineをもう1つ増やそうか迷ったほどです。
ただ、嫁いびりのくだりや、「女子だから」「男子だから」と性別にとらわれすぎた描写など、どうしても引っかかるところがあり、今回は少し辛口の感想になりました。
とはいえ、前作同様、おいしそうな和菓子の描写はどれも見事。
ページをめくるたびに甘い香りが漂ってきそうで、和菓子好きにはたまらない作品です。
派手な謎解きよりも、季節の和菓子や人の温かさをじっくり味わいたい人に向いている一冊だと思います。
🎧️ 本作はAudibleでも配信中!
本作はAudibleでも配信されています。
ナレーターは安田愛実さん、再生時間は8時間21分です。
通勤や家事の合間など、ちょっとしたすき間時間に少しずつ聴き進められる長さです。
季節の和菓子が登場する場面は、耳で聴くとまた違った味わい。
活字とは違う楽しみ方で、アンちゃんたちの日常をのぞいてみてはいかがでしょうか。

