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本 薬丸岳 過激!おすすめ 🙂🙂🙂🙂🙂

【文庫本で読んでみた】虚夢 / 薬丸 岳

こんにちは!ヤマモトサオリです。

みなさんは刑法第39条という法律をご存じですか?

凶悪犯罪のニュースで「犯人の精神鑑定が行われる」と耳にしたことがある方も多いと思います。
その根拠となっているのが、この条文です。

(心神喪失及び心神耗弱)

第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。

2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

引用元:刑法第39条

「心神喪失」とは、病気などのために善悪を判断したり、その判断に従って行動したりする力がまったくない状態のことです。
「心神耗弱」は、その力が著しく弱っている状態を指します。

とてもシンプルな条文ですが、その解釈ひとつで「人はどこまで罪を問えるのか」という、重く深い問題が浮かび上がります。

今回ご紹介するのは、この刑法第39条を真正面から扱った、なかなかヘビーな一冊。
『虚夢』(著者:薬丸岳)です。

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こんな人におすすめ!

・犯罪の背景や動機に興味がある人
・登場人物の心の闇を丁寧に描いた作品を読みたい人
・社会派ミステリーに興味がある人

あらすじと補足

本作のテーマは刑法第39条。心神喪失状態の人物による殺人事件です。

主な登場人物は、小説家の三上と妻の佐和子、そして2人の幼い娘・留美の3人家族です。

物語は、ある通り魔事件から始まります。
佐和子と留美が事件に巻き込まれ、佐和子は命からがら助かったものの、留美は亡くなってしまいます。

犯人は、藤崎という男。
その場で逮捕されましたが、統合失調症の症状によって心神喪失状態だったと判断され、不起訴処分に。
裁判は開かれず、罪に問われないまま終わってしまったのです。

娘を失い、心に深い傷を負った三上と佐和子は、やがて離婚。
それから4年後、三上のもとに元妻の佐和子から「あの男を街で見た」という連絡が入る、というストーリーです。

物語の中心になるのは、娘を失った父親・三上。
娘を殺した男が、今は普通に街を歩いている。
その事実を知った三上は男に近づこうとしますが、本当にあの男を見つけたいのかどうか、自分でもわからないまま揺れ動いていきます。
この三上の心の動きが、本作の大きな読みどころです。

読みながら「もし自分が被害者家族の立場だったら?」と自然に考えてしまう、リアルで重いテーマ。
心神喪失者を罰しないという法律は必要なのか、それとも不公平なのか。
そんなモヤモヤを抱えながら読み進める作品となっています。

印象に残った場面

被害者遺族の怒りや悲しみ

どんな理由があっても、殺人は決して許されるものではないと私は思います。

作中で被害者の立場から語られる「同じ事件であっても、複数の精神鑑定で意見が食い違ったりすることもあります。
人を殺してしまっても仕方がないとされる精神状態の基準というものが、被害者であるわたしにはまったくわかりません」というセリフがあります。
私も同感です。

法律上の判断や専門家の理屈では片づけられない、遺族としての怒りと悲しみが凝縮された言葉だと感じます。

不起訴になると裁判は開かれないため、遺族は法廷で犯人の言葉を聞いたり、事件の経緯を確かめたりする機会すら失ってしまいます。
怒りをぶつける場所も、納得するための手がかりもない。
このセリフの重さは、そんな行き場のなさから来ているのだと思いました。

加害者の心境も描かれている

本作は被害者だけでなく、加害者にも焦点を当てています。

加害者がどのような心境で犯行に及んだのか。
罪に問われないまま社会に戻ったあとの足どり、そして精神疾患ゆえの苦しみ。
一方的に「加害者=悪」と決めつけるのではなく、一人の人間としての姿にも迫っていきます。

読みながらふと、「自分が加害者だったら?」「自分の大切な人が加害者になってしまったら?」と考えてしまいました。

被害者と加害者、どちらの立場にも偏らずに描かれているからこそ、胸に重くのしかかってきます。
そして、生きている限り誰もがどちらの立場にもなりうるのだと、突きつけられる思いがしました。

統合失調症について

本作のもう一つの大きなテーマは、統合失調症です。

加害者の藤崎は、統合失調症による心神喪失と判断され、罪に問われませんでした。
一方で、幼い娘を奪われた佐和子もまた、心の傷に耐えきれずに精神を病み、同じ病を抱えることになります。

加害者と被害者という正反対の立場にありながら、同じ病と向き合うことになる。
その皮肉で残酷な対比が、強く心に残りました。

人間の心の脆さと、それでも必死に抗おうとする姿が、痛々しいほどリアルに描かれています。

ただ、誤解のないように書いておくと、統合失調症は100人に1人弱がかかるといわれる、決して珍しくない病気です。
病気を抱える人の多くは治療を受けながら暮らしていて、「統合失調症=危険」というわけではありません。
本作を読むときも、そのことは頭の片隅に置いておきたいと感じました。

総評

4 out of 5 stars

とても考えさせられるストーリーでした。

大切な人が目の前で殺され、犯人はその場で逮捕されたのに、「心神喪失状態だったので罪には問えない」と告げられたら…
「はい、そうですか」と納得できる人は、きっといないと思います。

日本には、「医療観察法」という制度があります。
心神喪失などを理由に、不起訴や無罪となった人が対象です。
裁判所の判断で、入院や通院による治療を受けさせる仕組みで、2005年から始まりました。

つまり、「罪に問われない=何の手当てもなく社会に戻る」というわけではないそうです。
それでも、被害者や遺族の気持ちが収まるかといえば、それはまた別の問題ですよね。

同時に、自分や身近な人が加害者になってしまう可能性もゼロではありません。

どんな理由があっても殺人は決して許されるものではない。
そう思う一方で、人生は何が起こるかわからないのも事実です。
だからこそ、「できれば被害者にも加害者にもならずに生きたい」と強く感じました。

刑法第39条を題材にした作品は多くありますが、本作は重いテーマを扱いながらも文章が読みやすく、ぐいぐい引き込まれます。

性的な描写もありますが、人間模様がしっかり描かれているので、ぜひ多くの方に読んでほしい一冊です。

🎧️ 本作はAudibleでも配信中!

本作はAudibleでも配信されています。
ナレーターは岡田恵さん、再生時間は8時間35分です。

重いテーマの作品だからこそ、耳で聴くと登場人物の言葉や感情がより深く心に届きます。
通勤や家事の合間など、少しずつ物語を追いかけられるのもうれしいポイントです。

紙や電子書籍で読むのとはまた違った形で、三上たちの葛藤をじっくり味わってみてはいかがでしょうか。

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ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。