こんにちは!ヤマモトサオリです。
みなさんは、本を紙で読む派ですか? 電子書籍で読む派ですか? それとも、耳で聴く派でしょうか。
私はずっと紙の本派で、「本はやっぱり紙で読まないと!」と思っていました。
そんな私が今回は「聴く読書」に挑戦してみました。
今回紹介する作品は、『カササギ殺人事件(上)』(著者:アンソニー・ホロヴィッツ/訳:山田蘭)です。
『カササギ殺人事件』は、2019年本屋大賞翻訳小説部門を受賞し、国内で7冠を達成した話題のミステリー小説です。
上下巻の二冊構成で、この記事では上巻について紹介します。
実は本作、以前に紙の本で一度読んだことがあります。
ただ、内容をかなり忘れてしまっていたこともあり、せっかくならと、今回初めてAudibleで聴いてみることにしました。
Audibleは、初めて利用する方なら30日間の無料体験ができます。
無料期間中に解約すれば月額料金はかからないので、気になった方はこの記事を読みながら、ぜひ気軽に試してみてください。
なお、聴き放題の対象外の作品は、別途購入が必要なのでご注意を!
こんな人におすすめ!
・クラシカルな英国ミステリが好きな人
・作中作の世界に浸りたい人
・じっくり謎を追いたい人
あらすじと補足
物語は、出版社で編集の仕事をしている「わたし」(名前は下巻で明かされます)が、人気ミステリー「アティカス・ピュント」シリーズの第9作『カササギ殺人事件』の原稿を読み始めるところからスタートします。
作中作『カササギ殺人事件』は、地主の屋敷に仕える家政婦が階段から転落死するという、痛ましい事故(それとも事件?)から幕を開けます。
村人たちそれぞれの視点で、故人とのやり取りや葬儀の様子、事故直後の行動や思いが断片的に描かれ、やがて第二の事件が発生します。
そこから私立探偵アティカス・ピュントが登場し、点と点をつなぎながら真相を追っていきます。
本作は、編集者の「わたし」が、担当する人気作家アラン・コンウェイの新作原稿を読み進めていく、という二重構造になっています。
物語の中にもう一つの推理小説が丸ごと入っている「作中作」の形で、作中作のミステリーと、それを取り巻く現実世界のドラマが巧みに交差していきます。
冒頭で「わたし」は、この原稿を読んだことで自分の人生が変わってしまったとほのめかしています。
その変化がどう描かれていくのかも、本作の見どころのひとつです。
Audibleのナレーターについて
Audible版では、この二つのパートをそれぞれ別のナレーターが担当しています。
上巻の再生時間は11時間37分です。
編集者である「わたし」の視点で語られるパートを担当するのは、『ONE PIECE』のニコ・ロビン役や『新世紀エヴァンゲリオン』の赤木リツコ役でおなじみの山口由里子さん。
そして、作中作である名探偵アティカス・ピュントの世界を担当するのは、『幽☆遊☆白書』の浦飯幽助役や『テニスの王子様』の亜久津仁役で知られる佐々木望さんです。
上巻では、冒頭で山口さん演じる「わたし」が少し語ったあと、すぐに原稿の世界へと入っていきます。
それ以降はほぼすべて佐々木さんのパートで、登場人物も多いため、まるで佐々木さんの一人芝居を聴いているような時間が長く続きます。
はじめは「一人で演じ分けるのは、聴く側も大変そう…」と思っていたのですが、キャラクターごとに声色が見事に使い分けられていて、気づけばすっかり物語に引き込まれていました。
印象に残った場面
海外作品特有の「読みづらさ」もAudibleなら気にならない
活字を読むのには、やっぱり「慣れ」が必要だと思います。
特に海外作品は、少し読みづらいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本作は登場人物が多く、文庫版の登場人物紹介に載っているだけでなんと23人。
人名も「メアリ・エリザベス・ブラキストン」など長めで、地名も「サクスビー・オン・エイヴォン」といった具合に、パッと見ただけでは人名なのか地名なのか判別しづらいこともあります。
書籍だと「あれ、この人さっき出てきたっけ?」と、何度もページを戻りたくなる場面もあるかもしれません。
加えて、「村の緑地でクリケットをする」「土葬のための穴を掘る」といった日本ではあまり見かけない文化の描写や、おせっかいな人のことを「すべてのパイに指を突っこむ人間」と表現する独特の言い回しも登場します。
これは、英語の「have a finger in every pie(何にでも首を突っこむ)」という慣用句を訳した表現のようです。
こうした細かな描写に、つい立ち止まってしまう方もいると思います。
こういうタイプの海外作品こそ、Audibleの出番です。
目で追うと引っかかってしまう名前も、耳で聴けば発音ごとインプットされるので、意外なほどスムーズに頭に入ってきます。
見慣れない描写も、朗読のテンポに乗って聴いていると、立ち止まることなく情景として受け取ることができました。
さらに、佐々木さんは人物ごとに声のトーンやテンポを変えているので、名前を覚えていなくても「あ、さっき出てきた牧師さんね」と耳で判別できます。
これも朗読ならではの利点だと思います。
不幸の原因はいつも他人?
登場人物の中には、自分の不幸な境遇について「自分は悪くない」「何もしていないのに」「あいつのせいでこうなった」と、他人を責め続ける人が何人も出てきます。
「いやいや、自分の人生を何とかしようとしなかったのは自分でしょう」とツッコミたくなる場面もしばしば。
もちろん気の毒な事情もあるのですが、自分では何もしないまま不幸を嘆く人って、実際にいますよね。
余談ですが、私は母から「あんたのせいで今日も何もできなかった」「あんたが片付けてくれないから家が片付かない」「全部あんたのせいだ」などと言われて育ちました。
私は、自分の人生の責任はすべて自分にあると思っているので、自分のことを棚に上げて他人のせいにする人はとても苦手です。
ちなみに「あんたが片付けてくれないから家が片付かない」は、大人になって離れて暮らすようになってからも言われたことがあります。
一緒に住んでいないのに、私のせいで片付かないはずがありません。
そのとき、子どもの頃から心のどこかにあった「本当に私のせいなのかな」というモヤモヤが、すっと消えました。
そんな経験があるからか、他人を責め続ける村人たちの姿には、ついイライラしてしまいました。
ピュントの最後の一言にすべて持っていかれる
ストーリーが進むにつれ、複雑に絡み合った人間関係や事件の断片が少しずつつながっていき、ついにピュントが真相へと迫っていきます。
そして上巻のラスト、ピュントのたった一言で場の空気が一変します。
「えっ、どういうこと!?」と、思わず声が出そうになりました。
それまで積み重ねられてきた重厚なテーマや、じわじわと進む展開が、この一瞬で「早く続きが読みたい」という衝動に塗り替えられる。
読者の心を自在に転がす仕掛けの巧さに唸らされました。
Audibleで聴いていると、この「空気が変わる瞬間」が、ナレーターの佐々木望さんの間の取り方や声色の変化でさらに際立ちます。
紙で読んだとき以上にゾクゾクする体験になりました。
このゾクゾク感は、ぜひ実際に耳で聴いて味わってみてほしいです。
Audibleで気になった点
一つだけ気になったのは、「ながら聴き」との相性です。
名前や描写は耳で聴くとすんなり入ってくる一方で、朗読はこちらの集中が途切れても待ってはくれません。
ちょっと考え事をしていたり気がそれたりすると、話をまったく聴いていない時間が生まれてしまい、「あれ、なんの話だっけ?」となることが何度かありました。
巻き戻して聴き直すものの、また気がそれて、結局肝心なところを聴き逃してしまう… ということも一度や二度ではありませんでした(汗)
私は普段から、YouTubeの解説動画やまとめ動画などを作業しながら聴いているので、耳で聴くこと自体には慣れているつもりでした。
ただ本作は、登場人物が多いうえに、何気ない会話や描写の中に謎解きの手がかりがちりばめられているミステリーです。
少し聴き逃しただけでも話の流れを見失いやすく、「ながら聴き」にはやや難易度が高めかもしれません。
慣れないうちは、静かな環境でじっくり聴くのがおすすめです。
総評
作者のアンソニー・ホロヴィッツは、ドラマ「名探偵ポアロ」の脚本も手がけた作家です。
上巻で描かれる作中作は、ミステリーの女王アガサ・クリスティーへのオマージュになっていて、古き良き英国ミステリーの雰囲気をたっぷり味わえます。
ポップな表紙とは裏腹に、物語は決して明るくはありません。
人間の醜さや保身、本音と建前… そうした「生々しい現実」を、この一冊は容赦なく突きつけてきます。
けれど、その中にはわずかながら希望も潜んでいて、それらが複雑に絡み合った物語は、聴き終えたあとも長く心に残りました。
今回あらためて感じたのは、物語の運び方の巧みさです。
序盤のゆるやかな語り口から、ラストの衝撃的な一言に至るまでの流れが、本当に見事でした。
二度目なのに初めてのような新鮮な衝撃を味わえたのは、単にストーリーを忘れていたからというだけでなく、Audibleで聴いたからこそかもしれません。
最後の「あの一言」がいったい何を意味するのか、下巻がとても気になります。
クリスティー作品のような王道の謎解きが好きな方はもちろん、海外ミステリーにこれから挑戦してみたい方にもおすすめしたい一冊です。
海外作品が苦手な方こそ、無料体験で「聴く読書」との相性を確かめてみてほしいです。
「あの一言」の意味と、物語の結末は下巻で明らかになります。下巻の感想は、こちらの記事でまとめています。

