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おすすめ! 原田マハ 本 🙂🙂🙂🙂🙂

【文庫本で読んでみた】楽園のカンヴァス / 原田 マハ

みなさんは、美術館は好きですか?
私はアート作品を見るのが大好きで、美術館や個展にもときどき足を運んでいます。

まだ国内の美術館にしか行ったことはありませんが、いつかパリのルーヴル美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館など、海外の名だたる美術館にも行ってみたいです!

そんなアート好きの心をときめかせてくれたのが、今回ご紹介する一冊。
『楽園のカンヴァス』(著者:原田マハ) です。

ページをめくるたびにアートの世界を旅しているような気分になり、日常から離れて物語に没頭できました。

こんな人におすすめ!

・美術をテーマにした本格ミステリーを探している人
・歴史的事実とフィクションが絡み合う物語を楽しみたい人
・作中作(小説の中に「もうひとつの物語」が出てくる作品)が好きな人

あらすじと補足

物語の始まりは2000年。
主人公は、岡山県倉敷市にある大原美術館で監視員として働く、43歳のシングルマザー・早川織絵です。

若い頃はパリで美術を研究していた織絵ですが、今は母と16歳の娘・真絵と3人で暮らしています。
思春期の娘との関係に悩みながらも、日々の仕事を淡々とこなしている様子が書かれています。

ところがある日、勤務中に上司から突然呼び出され、思いもよらない話を聞かされます。
日本の新聞社が大規模なアンリ・ルソー展を企画し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵するルソーの代表作『夢』を借りようとしました。
ところが、MoMAのチーフ・キュレーターであるティム・ブラウンは「織絵を交渉役にするなら考える」と返答してきたというのです。

一介の監視員にすぎない織絵が、なぜそんな大役に指名されたのか… ここまでが、現代を描いた第1章です。

第2章からは一転して、舞台は1983年のニューヨークへ移ります。
主人公は、当時MoMAでアシスタント・キュレーターを務めていた若き日のティムです。
ある日ティムのもとに、伝説のコレクター、コンラート・バイラーの代理人から、ルソーの知られざる名画を調査してほしいという手紙が届きます。
名前のよく似た上司トム・ブラウンと宛名を間違えたらしいのですが、ティムはこれをチャンスと捉え、スイスのバーゼルへ向かいます。

そこで待っていたのは、『夢』とほぼ同じ構図で描かれた謎の絵画『夢をみた』。
その真贋の判定を求められたティムの前に、ライバルとして現れたのが若き日の織絵でした。

2人に与えられた期限は7日間。
手がかりとして読むよう渡されたのは、ルソーの物語が綴られた謎の古書でした。
過去パートはティムの視点で描かれ、この古書の物語、つまり「作中作」を読み進めながら真相に迫っていくというストーリーです。

アート小説でありながら、美術史の知識や作品の解釈をミステリー仕立てで読ませる構成になっていて、読み応えたっぷりです。

印象に残った場面

作中作がおもしろい

ルソーの晩年を描いた作中作が、とても印象的でした。

ティムと織絵が鑑定の手がかりとして渡されるのは、全7章から成る古書の物語です。
2人はこれを1日に1章ずつ読むよう求められ、7日間かけて絵の真贋を見極めていきます。

作中作の舞台は1906年のパリです。
そこから1910年までの、ルソーの晩年の日々が描かれます。
もともと税関の職員だったルソーは独学で絵を学んだ画家で、当時は「日曜画家」と揶揄されるなど、なかなか正当に評価されませんでした。
作中作では、そんなルソーがキャンバスに向かう日々が、まるで実際に見てきたかのように生き生きと描かれています。
若き日のピカソが登場するのも見どころの一つです。

構成もよく練られていて、1983年のバーゼルでの鑑定と、作中作で描かれるパリの日々が、一つの章の中で交互に描かれるのです。
読者もティムたちと同じペースで古書を読み進めることになるので、まるで3人目の鑑定人になったような気分で物語に入り込めました。

さらに、「この物語はいったい誰が、何のために書いたのか」という謎も、ページをめくる手を止めさせません。
作中作は物語を彩る要素であると同時に、ミステリーの核心にも深く関わっています。

小説の中にもう一つの物語を差し込むことで、作品全体に厚みが生まれています。
とくに、1983年の謎解きと作中作が呼応するように配置されていて、一つの絵画をめぐる謎が立体的に浮かび上がってくる構成は見事だと思いました。

「美術小説」でありながら、伝記や歴史小説のような味わいも楽しめるのは、この作中作のおかげです。

素敵な登場人物たち

ティムが「自分がルソーの友達だったなら…!」と思う場面が、とても印象に残りました。
私もまったく同じ気持ちで読んでいたので、思わず深くうなずいてしまいました。

悩みながらも絵を描き続けるルソーの姿はどこか愛らしく、そんな彼を支えようとする周囲の人々の温かさが胸に沁みます。

芸術というと「孤独な天才」のイメージもあります。
けれどこの物語では、人とのつながりがあってこそ生まれる創造が描かれていて、心を打たれました。

登場人物それぞれの優しさや心遣いが、ルソーという人物をより魅力的に見せてくれます。
そんな関係性の描き方が素敵で、読み終えた後もずっと余韻が残りました。

また、1983年のパートでは、ティムと織絵がライバルとして真贋を競い合います。
お互いを探り合う緊張感がありながらも、ルソーを愛する者同士として少しずつ通じ合っていく2人の関係も、本作の大きな見どころです。

ぜひ画像検索を!

本作には、有名な絵画が数多く登場します。

読んでいると「どの作品のことだろう?」と気になって、思わずスマホで画像検索をしてしまいました。

まずは、この本の表紙をじっくり眺めてみてください。
表紙に使われているのは、物語の鍵となるルソーの『夢』です。
うっそうとした密林の中で、ソファに横たわる女性が描かれています。
読み始める前と読み終えた後とでは、同じ絵でもきっと見え方が変わってくるはずです。

そのうえで、ルソーのほかの作品も検索してみるのがおすすめです。
たとえば『眠れるジプシー女』や『戦争』など、ルソーならではの独特な世界観に触れておくと、作中で語られる彼の絵への思いがより身近に感じられます。

実際の絵を確認しながら読み進めると、物語への理解が深まるだけでなく、臨場感も増します。
文字だけで想像するよりも、画家の筆致や色彩を自分の目で確かめ、物語と照らし合わせることで、作品の世界がより立体的に感じられました。

紙の上だけで完結させる読書ももちろん良いですが、今の時代ならではの読み方として「スマホ片手に読む」のはかなりおすすめです。
美術館を巡りながら小説を読んでいるような感覚を味わえますよ。

総評

5 out of 5 stars

最後の最後までわくわくしながら読み進められる、とても満足度の高い作品でした。
一つの絵画を題材に、ここまで豊かに物語をふくらませられるのかと感心させられます。

アート小説というと敷居が高い印象を持つかもしれません。
でも本作はミステリー仕立てでテンポよく進むので、絵画に詳しくない人でも自然と引き込まれるはずです。
芸術作品の背景にある人間模様や時代の空気を感じられる点も、この小説ならではの魅力だと思います。

著者の原田マハ氏は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などで勤務した後、キュレーターとしても活動してきた経歴の持ち主だそうです。
本作は第25回山本周五郎賞を受賞し、第10回本屋大賞でも第3位に選ばれています。
美術の現場を知る著者だからこそ描ける、リアルな美術界の空気も、本作の魅力の一つですね。

原田マハ氏はほかにも、『暗幕のゲルニカ』『ジヴェルニーの食卓』『たゆたえども沈まず』など、アートを題材にした小説を数多く手がけています。
本作と世界観を共有する短編集『モダン』もあるので、こちらも気になっています。
本作をきっかけに、ほかの作品にも触れてみたいと強く思いました。

絵画に興味がない方でもきっと楽しめる一冊です。
心からおすすめしたいです!

  • この記事を書いた人

ヤマモトサオリ

こんにちは!books and iinedaysの管理人、ヤマモトサオリです。
餃子とカツカレーとラーメンが好きです。よろしくお願いします。